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土曜授業も無事終わったので、午後からのアルバイトに出る。買い出しの連絡もあったので、スーパーで買い物を済ませて、軽く化粧をしてからお店に向かう。
叔父さんの経営している、会員制のカフェ兼バーみたいなお店。お店があるのはゴリゴリの都心部なのに、隠れ家みたいな雰囲気が私は好きだ。流石に制服なのはマズイので、最寄りの駅で私服に着替える。
「買い出し終わりました〜、着替えてきます」
「おつかれ。ゆっくりでいいからな」
営業前だからか割とゆるい空気感。黒いエプロンを身にまとえば、たちまちお仕事モード。下準備は叔父さんに任せて、私は掃除担当。飲食店だからこそ清潔感は重要なのだ。
アルバイト禁止の高校だから、この仕事は学校には内緒。叔父さんにも最初は反対されていたけれど、今後の自分の学費と生活費のためにと理由を説明すれば、シフトは夏休みと土日のみ、条件付きで渋々承諾してくれた。
このお店のことを学校の友人等に口外しないこと、あからさまに怪しい客がいたらきちんと叔父さんに話をすること、自分が学生であることは隠すこと。どれも破ったことはないけど、芸能関係の人が好んで利用している場所だからこそ、守らなきゃいけないこと。
ドアのCLOSEと書かれたプレートをOPENにひっくり返して、カウンターでコーヒー豆を挽く。ふんわり香るほろ苦い香り。まだブラックは飲めないけど、カフェオレは大好き。
カランコロンと鈴の音がする。こんな早くから…誰だろう?
「ようこそ、いらっしゃいませ」
「えへ、また来ちゃった」
いつもの、マスクとキャップ、眼鏡のお客さん。オムライスのウインナー入りを毎回頼んでくれる。あと私と一緒でブラックコーヒーが苦手で、芸能関係の方だということだけは知っている。名前は一切知らないけど。
「今日も、いつものでいいですか?」
「うん。今日はここで作って?」
「かしこまりました。オムライスひとつ、と」
伝票にボールペンで書き込んで、とりあえずお冷を提供。カウンター後ろのコンロでオムライスを作る。
「聞いてくださいよ、昨日アイドルさんに会っちゃって、しかもジャニーズの!しかも私の名前割れててびっくりしました。ここの関係者の人なんですかね」
「ふーん、多分そうなんじゃない?」
「ふーんて、話聞く気ないじゃないですか。もー…」
いつも私の話に付き合ってくれる常連さんだから、もっと親身に聞いてくれると思ったのに。意外と冷めてる。
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作者名:ちくわ。 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pipipi__dream
作成日時:2015年6月1日 0時