アガパンサスの花束を君に。 (ページ17)

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親御さんにも夜遅くなっちゃうから伝えておいてね、と言われたのでその場で確認した。全然行っといでと即返信。

有岡さんにその画面を見せたらいいご両親だねと生暖かい目で見られた。お父さんはちょっと不満そうだったけど。

「有岡さんこそ、クリスマス目前なのに彼女さんほっておいてテーマパーク行って大丈夫なんですか？」
「彼女いたら女の子と二人でデートなんか行かないよ」
「あはは、そうですよね」

至極真っ当な返答が返ってきた。有岡さんに当分彼女ができないことを知ってどこか安心する私。…ちょっと性格悪いかな。

「またしばらくお店来れないかもしれない」
「お忙しいですもんね、有岡さん。土日なら大抵いるのでまたいつでも遊びに来てください」

また当分会えないという事実に胸がちくりと痛む。前のように直接会えるような機会もきっとないだろうし。

大型番組が終わったと思ったら、ドラマに新しいシングル発売、そしてまたツアー。人気が留まるところを知らなくて。私とは住む世界が違うんだなと、ものすごく痛感した。

「Aちゃんのオムライステイクアウトしていい？」
「よかったらオムライスのレシピも後で送りますよ」
「まじで！やった」

この純粋で屈託のない、きらきらした少年みたいな有岡さんの笑顔が大好きで。オムライスひとつで大好きな笑顔が見れるならいくらだって作れる。

巷ではメレンゲをふんだんに使ったふわっふわのオムライスだとか、とろっとした半熟のデミグラスソースがかかったような小洒落たオムライスとか、色んなオムライスがあるなかで私のオムライスを選んでくれていることがとても嬉しい。

テイクアウト用の容器に普段のものより一回り小さめのオムライスを詰め、小分けのケチャップとプラスチック製のスプーンをひとつ。

「ご来店いただきありがとうございました、またいらしてくださいね」
「またすぐ来るから！」
「はい、ぜひご贔屓に」

ちゃんと電話してねと告げて、裏路地へと消えていった有岡さんの背中がどこか名残惜しくて。