黄色いベースにかけた想い【Hikaru.Y】

＊ ページ32

どうしても言えないことってあるよね。
どんなに仲の良いバンドメンバーでもさ、
踏み込むには躊躇ってしまう一線があると思う。

だけどこれに関しては一言言わせていただきたい。
むしろ声を大にして言いたい。

「私のレベルで大会申し込むとかばかなの！？」

「ごめんて」
「いのちゃんには全く反省の色が見えないね」

ほんとにばかだと思う。
もちろん、私以外の3人は才能あると思っているし、
曲の魅せ方も凄く分かっていると思う。

ただ、私が、ね。

3人の才能についていけていないのだ。
かと言って3人で出てもらう訳にもいかず、今から
ベーシストを探すのも無理がある。
だから言ったのだ。

「ほんとばか」
「…challengeするだけならNo problemじゃない？」

「発音がネイティブすぎてちょっとうざいけど…
まあいいや。やるからにはやってやろうじゃん？」

「けーとってなかなかに不憫だよね」
「俺本人に言うことが一番不憫に感じるよ…」

結局、今日も私はみんなの空気に癒されて、
流されるんだ。
実はそれが心地よかったりする。

「大会っていつなの？」
「予選は文化祭の2ヶ月後くらいだね」

「おー。割と厳しいじゃーん」

「いのちゃん…」
「…」
「なんだよ、」

「いや原因あなたですから！」

全員が一気に吹き出した。
一瞬静まった部屋に笑い声が反響する。
このメンバー、結構笑いのツボ浅いのかもしれない｡

でも些細なことで笑い合えることって
大事だと思うから、この空気を大事にしたい。

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