黄色いベースにかけた想い【Hikaru.Y】

＊ ページ17

八乙女さんも笑顔で迎えてくれた。
昨日の今日で来店した私にびっくりしてたけど。



「あの、暫くお時間大丈夫ですか？」
「え？うん、大丈夫だよ」

「よかった…今日は八乙女さんに会いに来ました」

「まじで？嬉しい！
この店ほとんど人来ねぇから暇してたんだよね」
「え、そうなんですか？こんな素敵なお店なのに」
「ありがとね」

はにかんだように笑う八乙女さん。
不謹慎だけれど、
今日はこのまま来店がなければいいと願ってしまう｡



この人といると不思議な気持ちになる。

心はぽかぽかするのに、
心臓はどきどき。
でも、凄く安心する。

なんだろう、この感じ私知ってる。
好きなアーティストに感じるのと同じ…？

まだ知り合って2日も経っていないというのに
ずっとそばに居たいと思った。
八乙女さんも同じならいいのに。



「今日から部活動始まったんですよ！」
「どう？ベース弾けそう？」
「まだ指は辛いですけど弾けそうです」

「そっかそっか」



…ぽんぽん、



「え、」
「あ。ごめん、つい」
「いえ。嬉しいな…なんて」
「え？」
「あ、や、何でもないです！！」



考えるよりも先に口にしてしまっていた。
八乙女さんの出す雰囲気があまりにも優しくて、
ずっとこの空気に包まれていたくて。
私は八乙女さんと過ごす柔らかな空気が好き。

恥ずかしい。

早くこの気まずい空気を元に戻したい。
そう焦るほど頭の中は真っ白になっていって。

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