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『ただいま…』
仕事帰りに買い物をして家に帰ってきた。
あれ、けーといない……
体調良くないのか……
「………ぅぅ…………」
荷物を置いて寝室に近づくと唸ったような声が聞こえた。
『けーと?』
ガチャ
『気分はどう?』
ベットに腰を掛けてうつ伏せているけいとに話しかける
「……あんまりよくない……なんかムカムカする……」
枕に顔をつけてごもった声で聞こえた。
けーとの体調不良は妊娠初期によるものだった
あれからずっとこの調子だ。
普通の人よりかなり重いつわり……
妊活中も副作用が続いていたし、そういう負担に敏感な身体になってるのかもしれない。
「……ん、やまちゃ、……」
『少しは楽になりそうか?』
首に近い背中を擦ってやると落ち着いた様子。
「うん……落ち着いたかも……」
『そか……』
でも、けーとに負担ばっかりかけてるな……
やぶちゃんたちに相談したけど男性の妊娠は年々増えてきてる。
でも、男性の身体は子どもを作るためにはできていないから、つわりの期間にその準備も重なるみたいで……
モゾモゾ……
「やまちゃ?」
急に静かになったからかけーとがおれの方に向きを変えた。
『ごめん………けーとにばっかり辛い思いさせてる……』
「ふふ…」
『けーと?』
結構しんみり言ったつもりだったのに、クスクス笑うけーと。
「……今更でしょ?……山ちゃん…」
『なんだよ…それ…』
「困った顔してる……もぅ…優しすぎだよ……」
頬を赤らめていうけーと。
優しいのはけーとなんじゃないの?
あんなに悩ませて不安にさせて辛い思いまでさせてるのに……
全部受け入れてくれてさらに優しいなんて言うし…
『……優しいのはけーとの方だろ?』
「……まぁ……しんどくないっていえば嘘になる。」
『………』
「でもね…このしんどさがいまは幸せ。」
『けーと…』
「だって、身体の辛さがお腹のなかに山ちゃんとの赤ちゃんがいることを実感させてくれる。」
______やぶちゃんが言ってた……
母は強し。
その言葉は本物。
辛さが幸せ。
ひかるくんもそういってた。
「だから…さ、そんなに心配しないでよ。」
『けーと‥‥』
………
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作者名:littlestar x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=littlestar03
作成日時:2020年12月9日 14時