彼：3-2 ページ14
ベンチで眠る彼女を、ビルは見つめ、自分に言い聞かせた。
今度はしくじるな。もう二度と、こんな好機は訪れないのだから。
彼女は異世界の存在だ。だから、この世界とは異なる波長を持っている。
そう、私はこの世界とは干渉できないが、彼女となら干渉しあえる可能性があるのだ。
静かに深呼吸をし、彼女に触れる。
そして彼女の夢の中に入ることを試みた。
一瞬の暗転。そのあとすぐに、彼女の夢の中であろう、豊かな森の中に私はいた。
彼女と思しき人影は、すぐに見つかる。
少し服装を整え、『やあ！』と声をかけた。
彼女が振り返る。怪訝そうな顔つきだ、まあ当然だろう。
「誰？」
「ああ、自己紹介が遅れたね。私はビル、ビル・サイファー。君を助けるために、いまは夢に入り込んでる」
彼女は頷いたが、怪訝な顔は変わらない。
「じゃあ、ここは夢の中ってこと？それに、助けるって？」
「まぁまぁ、そう焦らないで。お茶でも飲みながら、ゆっくり話をしようじゃないか」
そう言って指を弾くと、上等のティーセットが1組とこの場所に似つかわしいテーブルと椅子があらわれた。やはり、こうじゃないとな！
頭の中なら、私は力を自由に使えるようだ。
「アールグレイ？ダージリン？レディグレイかな？」
彼女はレディグレイを選び、数十秒後にはいい具合に淹れたお茶と美味しいお菓子があった。
「さて、私は君より長生きして、色々なことを知っている。だから、かわいそうな君のために、ここから出ていく手助けをしてあげよう！そう考えたのさ」
「本当に、帰れるの？」
「努力しよう。ただ、その代わりに１つだけお願いがある。私はいま、力がほとんど使えない状態だ。だから、元に戻るために君の本を使わせて欲しい」
私の考えた作戦はこうだ。まず、彼女の本『異常物品目録』は、独自の技術で次元間に穴を開け本の中に閉じ込めるという仕組みだと考えられる(彼女の話を聞く限り)。つまり、わざと本の中に入って、また出てくれば私は元に戻れるというわけだ！
じつにいい作戦だ。自分を誇りに思う。
「それくらいなら、多分大丈夫。じゃあ……」
「契約成立だな。それから、今夜のことは2人だけの秘密にしておいてくれないか？」
「いいけど、どうして？」
「私のことをよく思わない者もいる。いつか話そう」
差し出した手に、青い炎が灯る。
彼女はその手を握り、私に頷いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ロイヤルストリート(プロフ) - 傀儡さん» ありがとうございます！ (2017年8月27日 22時) (
レス) id: 2a96eef140 (このIDを非表示/違反報告)
傀儡(プロフ) - 更新お疲れ様です！！ (2017年8月27日 21時) (レス) id: 40e3112149 (このIDを非表示/違反報告)
にぃ - これからも更新頑張ってください。 (2017年8月20日 22時) (レス) id: 6d20a5cfdd (このIDを非表示/違反報告)
ロイヤルストリート(プロフ) - にぃさん» 初コメントだったんですか！？すごく光栄です、これからもどんどん更新していくので、よろしくお願いします (2017年8月13日 21時) (レス) id: c29879431f (このIDを非表示/違反報告)
にぃ - 僕、コメントしたのこの小説がはじめてなんですよ。これからも更新頑張って頑張ってください。 (2017年8月13日 13時) (レス) id: 6d20a5cfdd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
