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好き・・・?
篤志が、わたしを・・・?
「・・・篤志はな、」
そう言って静かに話しだしたヒロ兄。
篤志はずっと、わたしを想ってくれていた。
だけどわたしの中には優樹しかいなくて。
優樹以外の人を愛すことはないと繰り返すわたしに自分の気持ちを伝えようと思ったことはなく。
夢にうなされて泣き出しては「優樹、優樹」と手を伸ばすわたしを抱きしめるのは相当辛かったと。
なのにそれでも・・・
どんな形でもいいから守りたい、とヒロ兄に話していたという。
「最近あいつ、詞がかけてねえんだ」
「───・・・なんで・・・?」
「不毛な恋が長すぎて、幸せな歌が作れないんじゃないか」
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だから篤志はわたしを避けてたんだ。
生活の中からわたしの匂いと姿を消して、曲づくりに集中したかったんだ。
あの篤志が詞をかけないなんて、どれだけ苦しかっただろう。
全然・・・気づいてあげられなかった。
「わたし、篤志のとこに行ってくる」
おお、行ってこいよと優しく笑って送り出してくれたのはきっと
わたしの出そうとしてる決断が正解だからだよね?ヒロ兄。
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店を出たわたしはタクシーに飛び乗り、篤志のマンションへと向かった。
合鍵はもう使わない。
エントランスで鳴らしたインターホン。
声が帰ってくることはなかったけれど、自動ドアが無言で開いた。
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「ごめんね、遅くに押しかけて」
そういうわたしの前に置かれたホットコーヒー。
来客用のカップに入ってる。
真理亜と行ったディズニーランドで買った、ミキミニのペアカップ。
それをずっと一緒に使ってきたけれど。
もうきっと・・・処分済み。
いま部屋を見渡せば・・・わたしが過ごした痕跡は綺麗サッパリなくなっているんだと思う。
だけど弱虫なわたしにそれを確認する勇気なんてないから。
ただ、彼の目だけを見て
「篤志、いままで本当にありがとう」
そう伝えることで、精一杯。
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篤志が居てくれたから、生きてこれたんだよ。
生き方を教えてくれたから、もう大丈夫だよ。
そう。わたしは、大丈夫だから
篤志は、篤志の時間を・・・大切にしてほしい。
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篤志は片手で顔を覆って、静かに泣きながら
「ごめん・・・・ありがとう」と言った。
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Me(プロフ) - 紫 Yukariさん» そうなんですね!!篤志との関係、個人的に好きだったので何か寂しいですね(T_T)これからも更新楽しみにしてます!続編嬉しいです! (2016年5月20日 21時) (レス) id: 6de1d6cb5d (このIDを非表示/違反報告)
紫 Yukari(プロフ) - Meさん» コメントありがとうございます♪楽しみにしてくださって嬉しい!(●´艸`) その通り、篤志との関係は終わりました!わかりにくくて申し訳ない(>_<) (2016年5月20日 7時) (レス) id: 2484694bbd (このIDを非表示/違反報告)
Me(プロフ) - もー( ; ; )次が楽しみです( ; ; )あの…主人公ちゃんと篤志は終わった(?)ってことですかね??すいません…いきなりこんな事を聞いてしまって( ; ; ) (2016年5月19日 21時) (レス) id: 6de1d6cb5d (このIDを非表示/違反報告)
Me(プロフ) - 紫 Yukariさん» これからも読みに来ますね!笑 はい!宜しくお願いします! (2016年5月18日 19時) (レス) id: 6de1d6cb5d (このIDを非表示/違反報告)
紫 Yukari(プロフ) - めんめんまさん» めんめんまさん、ありがとうございます!はじめて感想を貰ってめちゃめちゃ嬉しいです・・・!初心者なので、読みにくかったりするかもしれませんが頑張りますね☆これからもよろしくお願いします(^^)/ (2016年5月18日 16時) (レス) id: 2484694bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫 Yukari | 作成日時:2016年5月11日 16時