038 ページ38
.
初めて入ったそのお店。
レザーの匂いに混じって、僅かに焚かれたお香の匂いがする。
でもそれは全然イヤミな香りじゃなくて。
すうっと息を吸い込んだ。
ヒゲを生やしてキャップを被った色黒の店員さんが
「いらっしゃいませ。」
と落ちついた声で微笑む。
ここ・・・好きかも。
ショーケースの中にはフェザーのネックレスがたくさん並んでいて、どれも目移りするほどセンスがいい。
岩ちゃんには少し小ぶりな方が似合うよな、なんて思いながら吟味していたら
頭上から店員さんの「あれっ?」っていう声が降ってきた。
不思議に思って見上げると、彼の目線はわたしの手首を捉えていて。
目を丸くしていたかと思えば、次の瞬間下がる目尻。
「よく・・・似合ってますよ、それ」
「・・・あ、ありがとう、ございます」
妙に照れくさくなったのはきっと、それが自分の選んだものじゃなくて・・・
隆二くんが選んでくれたものだからだと思う。
恥ずかしい気持ちを隠すため、またショーケースに目線を落としたとき。
思わず「・・・あった!」と呟いてしまったのは
岩ちゃんに似合うネックレス・・・ではなく。
三つ葉のピアス。
小さなクローバーの下からはレザーのフリンジがぶら下がっていて・・・
間違いなく、ブレスにピッタリだ・・・!
「これ、ください!」
その後、ちゃんと岩ちゃんのネックレスも見つけてピアスとネックレスをお買い上げ。
プレゼント用ですか?って聞かれて、自宅用ですって答えたはずなのに・・・
小さな箱を取り出した店員さん。
なぜかピアスをその中入れてくれた。
せっかくだから、と笑う彼の意図が読み取れないままお礼を言う。
だけど、次の瞬間。
見覚えのある、小さな紙袋。
ピアスの箱とネックレスの巾着袋が入れられていくのを見ながら、思わず声が出た。
「・・・ああっ!」
わたしの声に、店員さんは
「今度は彼と・・・また、来てね」
なんて、言ってくれて。
.
雰囲気に引かれて入ったお店。
隆二くんもきっと同じような気持ちで気に入ってるんだろうな。
一緒にいないのに・・・同じ場所を共有できた感じが嬉しくて。
このブレスがあそこで選ばれたものだということも嬉しくて。
ひとり、ニヤニヤしながら街を歩いた。
きっと夏の暑さにヤラれた不審者に見えたかもしれない。
.
513人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みほこ(プロフ) - ニヤニヤがとまりません♪そしてまさかのピアス発見!!主人公ちゃんと隆二くんのかわいさに私もお仕事がんばれます♪もちろん、これからも楽しみにしてます♪ (2016年6月8日 9時) (レス) id: 6b3f9fe695 (このIDを非表示/違反報告)
紫 (Yukari)(プロフ) - みほこさん» コメントありがとうございます☆プレゼントの反応、更新しました。いかがだったでしょう( ´ ▽ ` )ノ この先も読んでもらえると嬉しいです! (2016年6月7日 21時) (レス) id: 2484694bbd (このIDを非表示/違反報告)
紫 (Yukari)(プロフ) - ねーやんさん» それなら良かったです(><)ATSUSHIをぶっこむタイミングを日々模索中・・・!(笑) (2016年6月7日 21時) (レス) id: 2484694bbd (このIDを非表示/違反報告)
みほこ(プロフ) - プレゼントの反応が楽しみです♪ (2016年6月6日 23時) (レス) id: 6b3f9fe695 (このIDを非表示/違反報告)
ねーやん(プロフ) - わけわからなくなはってませーん(^_^)むしろ個々の雰囲気が出てきた感じですねぇ。ATSUSHIのぶっこみ楽しみにしてます。ってか臣くんがぶっこんできましたね(笑) (2016年6月4日 11時) (レス) id: 99e7168525 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紫 (Yukari) | 作成日時:2016年5月30日 23時