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宿舎での仕事が入っていたけど、急いでそれを終わらせて私はスタジオにいた。
「あれ?Aさん、今日こっち来れないって」
「うん、向こうが早めに片付いたから」
お昼も休憩もなしで必死に終わらせた自分に苦笑する。
「なんかみんな垢ぬけてきましたよね〜」
「そうね」
私は後輩の言葉に相槌だけを打ち、目で彼を探していた。
.
.
ポジション評価で一位になったのに、失敗したことを悔み涙を流す彼にまた心を打たれた。
素直に喜んでいいのに。
母性本能ってやつが、私を混乱させる。
守ってあげたいなんて今まで男の人に思ったことないのに、
ぎゅっと抱きしめてあげたいって心から思った。
彼と顔を合わせることなく、私は会社に戻り仕事をする。
連絡をとることも出来ないけど、またあの場所で会えると思うと果てしない資料作りもはかどる気がした。
「お疲れ様でしたー」
19時45分。会社を出た私は急いで元彼との間に合わせ場所に向かう。
あ、ギリだ。
電車で2駅だから間に合うかな。
毎日顔を合わせてたのに、久しぶりに会うとなると緊張する。
それは好きのドキドキから来るものではなくなっていた。
「おう」
「お疲れ様」
「なに飲む?ビールでいいか?」
「あ、お茶でいい」
「なんで」
「宿舎には未成年の子もたくさんいるから」
「へぇー」
ビールとコーン茶、そしてアツアツのチゲが運ばれてきた。
「あのさ」
「なんだよ、冷めるぞ早く食えよ」
「ゆっくりご飯食べる気分じゃないから、もうはっきり言うけど。
電話何度も迷惑なの。
今大きな番組もたせてもらってるから。それに合宿生活してるし」
「俺に追い出されたからそんなとこで家政婦みたいなことしてるんだろ?
いいよ、帰ってきて」
「…家政婦って」
「結婚はまだしたくはないけどさ、やっぱりおまえが一番いいんだよ俺は」
「他の女はどうしたの?」
「ほんの気の迷い?浮気だから気にすんなって
本命はおまえだから」
私は何年もこんな男と無駄な時間を過ごしていたのか…。
悔しいよりも悲しかった。
鍵をテーブルに置き、席を立つ。
「もうあなたと会うことはないから。さよなら」
「あ、おい」
『幻滅したわ、あんたにじゃなくてあんたを好きだった自分にね』
お金を置き店を出ると、慌てた様子で元彼が追いかけてきた。
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杏花(プロフ) - ファニさん» コメントありがとうございます!応援して頂けて嬉しいです♪ノロノロ更新になりますが、頑張りますのでこれからもよろしくお願いします^^ (2017年7月20日 0時) (レス) id: 1aafa2c1d9 (このIDを非表示/違反報告)
ファニ(プロフ) - 読ませていただいてます。 この話を読みながら思い返しています(T_T) めっちゃ応援しています^^ これからもp(*≧ω≦)/ ファイティン♪ (2017年7月16日 19時) (レス) id: 787a0420f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏花 | 作成日時:2017年6月22日 1時