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会社と宿舎の往復で心身ともにくたくただった私を癒してくれたのはやっぱりこの子だった。
『愛ちゃーん』
ニャー
『ミルクだよー』
ニャー
愛を抱きながら、ポツリポツリと独り言をつぶやくのも日課になっていた。
男尊女卑ってほどでもないけど、外国人である女の私がこの仕事をするのは易しいわけではないのは事実で。
怒鳴られ、罵られ、辛くないと言えばウソになるけども。
私は練習生の彼らに勇気づけられてここにいる。
『家ないしな…日本帰ろうかな…』
ぼそっと呟いたとき、ニャーと鳴きながら愛が下に降りて行く。
『ちょっと、愛ちゃん〜どこに行くの〜?』
彼女を追いかけて行くと
『愛ちゃん〜どこ〜?』
「サラン〜」
愛が向かった先には、ジャージ姿の男の子。
足元をスリスリしてる彼女はとても幸せそう。
「ジョンヒョンくん」
「Aさん」
愛を抱えた優しい顔。
私の名前を呼び、姿勢を正している。
本当にまじめなのね。
『愛ちゃんって言うんですね』
『え!ジョンヒョンくん、日本語喋れるの?』
『すこしだけですけど』
そう言って柔らかく笑う彼。
みんなのリーダーと言われてるしっかり者のイメージだったけど、彼から出た日本語がかわいくて愛おしかった。
「サランって呼んでたの?この子のこと」
「あ、はい。勝手にすみません。でも、Aさんの猫ですよね?僕も愛ちゃんって呼びます」
「サラン」
「え」
「ううん、この子はサランだよ」
当たり前のように私に譲ってくれることに胸が締め付けられた。
そうだ、いつもこの子は自分は目立たずに人を優先してきたんだ。
「サラン〜」
ニャー
「ほら、嬉しそうだもん」
「…はい!」
同じ意味の名前つけるなんて運命だねって笑って言おうとしたけど、心の中にしまった。
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杏花(プロフ) - ファニさん» コメントありがとうございます!応援して頂けて嬉しいです♪ノロノロ更新になりますが、頑張りますのでこれからもよろしくお願いします^^ (2017年7月20日 0時) (レス) id: 1aafa2c1d9 (このIDを非表示/違反報告)
ファニ(プロフ) - 読ませていただいてます。 この話を読みながら思い返しています(T_T) めっちゃ応援しています^^ これからもp(*≧ω≦)/ ファイティン♪ (2017年7月16日 19時) (レス) id: 787a0420f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏花 | 作成日時:2017年6月22日 1時