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「…失礼します、ご注文を伺いに来ました。」
個室の扉を開けてそう告げる。
わいわいと盛り上がっている個室内では、いろんな人がウロウロとお酒を手に歩き回っている。
多分、私の声は扉近くにいた数人にしか、聞こえなかったと思う。
「…はい、以上でよろしいですか?」
頼まれた注文を繰り返して、最終確認のために伝票から顔を上げれば、近くにいた男の人と思い切り目が合った。
『え!君、めっちゃ可愛いね…!』
「え…?」
唐突に言われたその言葉に、男の人の近くにいた人も私の顔をジロジロと見て、口を開く。
『うわ、本当じゃん!超かわいい!』
『何歳なの?高校生?』
「えっと…あの、」
『俺達と一緒飲もうよー!可愛いから大歓迎!』
きっとかなり酔っ払ってるのだろう、1番近くにいた人がそう口にすると、周りも同じような言葉を繰り返す。
「…いや、あの。勤務中なのでっ、」
『えー?そんなかしこまらないでよ。』
『ちょっとくらい大丈夫だって!』
「きゃ…!」
断ると、簡単に腕を掴まれて逃げれなくなってしまった。
嫌だ、怖い。どうしたらいいの…?
チラッと周りを見渡すと、ジミン先輩の姿を見つけたけど先輩は他の人との話に夢中で、私に気づく様子はない。
さっきまでジミン先輩の近くにいたグクオッパの姿は、そこにはなかった。
…きっと、さっきみた女の人とまだ一緒にいるんだ。
『ねえ、名前教えてよ!』
「いや、だからっ…」
『いいじゃん!名前聞くくらい!』
「…きゃ、!?」
掴まれた腕がグイッと引かれて、そのまま前にコケそうになったその時。
私のお腹にまわった腕のおかげで、無事にコケなくてすんだ。
SN「うちの店員に、何か用ですか?」
「っ、ソヌくん…」
私を抱きとめてくれたのは、ソヌくんだった。
ソヌくんが大きな声でそう口にするから、盛り上がっていた個室内が一気に静かになって、たくさんの人達が私達に視線を向けた。
SN「ここはキャバクラじゃない、女と遊びたいなら違う場所行け。迷惑だ。」
『なっ…!』
SN「失礼します。」
そう言って頭を下げたソヌくんは、私を引きずるようにして個室から出た。
SN「…悪い、もっと早く来れたらよかった。」
「ううんっ…」
ソヌくんは震えている私の体を支えながら、背中を優しく擦ってくれた。
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作者名:ぴぴ | 作成日時:2020年6月3日 2時