【募集企画】存在という罪-Reset-

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【過去】
「二人まとめてクビか」と思っていたら来たのは、人事部の人間ではなく社長。そしてその社長に言われたのは、「孫娘が消えた。『いた』はずなのに」「それを探す組織を作る。お前達はそこで働け」と。社長に孫娘がいたなど、とんと聞いたことがなかった。しかし明日から無職になるのと社長の無茶ぶりに乗るのを比べたら、どう考えても後者の方がいい。そうして、鷹岡勤と二人で「紫苑探偵事務所」を設立する。二人が27歳の秋のことだ。所長は鷹岡。「俺が初代！」と奴は事務所の壁にダブルピースの写真を飾った。
それからいろいろ調査を続けた結果、「忘失刑」のことだと特定出来たのが39歳の春。その頃から、徐々に「自分だけしか覚えていない人がいる」という人々が徐々に事務所へ所員として集まりだす。
そして53歳の夏。盆休みの最終日。鷹岡からメールが届いた。「休み明け、楽しみにしてろよ」
ーーしかし、休み明けに彼は来なかった。体調でも崩したのだろうかーーそうメールを送ろうとすると、彼のメールアドレスは存在しないものとなっていた。電話。全く知らない女の声。住所。ーー空き家！
もしや、と彼は翌日所員に聞いた。「最後に所長と会った者はいるか？」きょとん、とする皆の顔。一人が代表で言った。
「今、になるんじゃないですかね。所長」
しっかりしてくださいよ、どうしたんですか？ ーーそんな声が遠くなる、ゆっくりと振り返る、と。
飾られていた鷹岡の写真は、もうなかった。

【台詞サンプル】
「こんにちは、私は安藤陽向。陽向って顔じゃない？ 知ってるとも。紫苑探偵事務所の、二代目所長だよ」

「どうして初代の写真はないのかって？ ーー消えちまった、って言ったら分かるかなぁ？」

「まてまてまてまて、確かにこれは今までの仮説を裏付ける重要な情報だ。でもね、それで全てが上手くいくわけじゃないだろう？ どうやって知らしめる？ どうやって正当性を主張する？ 一旦落ち着こうよ」

「あーーーー確かにそうだ、そうだねえ。でもこれじゃ決定的にはならないよ……灰色に墨を一滴垂らせたくらい……あーもう望みが捨てられなくなっちゃうじゃないか、見なかったこ……なんてうそうそ！ 冗談だよ」

「さ、今日のおやつは芋けんぴ。老いも若いも混じって食べよう！ …………なんてね」

「トップは責任を取るためにいるんだよ。好きにやりなさい。私の存在一つでごまかせるなら、結構」

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