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「あっ、ジンくんかぁ〜！2択で外したなぁ…！ジンくん背高いねっ！何センチなの？」
「…185cmです」
「おっき〜！ってか、まつ毛長いね！まつ毛クンって呼んでいー？」
「あはは、えっと…」
苦笑を浮かべ視線をそらす神を見て、大佛はハッとして口を噤んだ。
＿＿しまった…！グイグイ行き過ぎた…！？
恐る恐る神の顔を覗き込もうとすると、神は
「君は？」
「へ？」
「君の名前。聞いてなかったなって。」
「あっ…！名乗ってなかったね！わたし、大佛Aっていいます！大きいって字に、仏って字の旧字なの！」
空中に文字を書きながら答える。
「神くんには負けるかもだけど、なかなか高貴な名字でしょー！」
そう言いニヤリと笑ってみせると、神は顎に手を当ててなにかを考えている素振りを見せた。
「……ダイブツ。」
「…………あーーーっ！！！」
大 仏
たしかにそのまま読めばダイブツなのだった。
大佛にとっては、名字の説明をするとたまに飛んでくるイジリではあったが、まさか神から飛んでくるとは思わずに口をあんぐりと開けてしまう。
「ふふっ、仕返し？」
今度はクスリと笑った神の笑顔に、トクンと胸が高鳴る。
先程とは違う、あたたかい、胸のトキメキ。
あたたかいなにかが、心臓に、全身に流れていくような感覚だった。
顔に熱が集まるのを感じ、大佛は咄嗟に窓の外に顔を向けた。
「………」
神は、再び顎に手を当て、しばらくしてこっそりをつぶやいた。
「…A」
「…………へ？」
「オサラギって言いにくいから、Aって呼んでもいい？」
心臓がバクバクとうるさかった。
男の人から下の名前で呼ばれることなど、ここ数年親族以外記憶になかったからだ。
逸る気持ちを抑え、めいっぱい笑顔をとりつくろった。
「へへ、いいよー！じゃーわたしはまつ毛クンね！」
「うーん、それはちょっと…」
ふたたび苦笑する神に、大佛は右手を差し出した。
「い、1年間、よろしくね！神くんっ！」
大佛の右手は、一回りふた回り大きい神の右手にすっぽりとつつまれた。
「うん、よろしくね。A」
握手している2人の姿を、ちょうど教室に入ってきた大佛の男友達に目撃され揶揄われたことは、数時間後には大佛の脳からはすっぱりと消え失せていた。
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作者名：宮永 | 作成日時：2023年8月20日 1時
