指先の熱【Hokuto/Juri】 (ページ10)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:58,085 hit

10 ページ10

.

音を立てて落ちる書類や荷物

気づいた時には北斗さんの腕の中に閉じ込められていた

抵抗する暇もなく、そのままシャツのボタンを一つ、二つと外され、驚きのあまり叫びそうになる

『ちょ、っなにを！』

北斗「これは？」

北斗さんが怖い

つ、と私の首筋をなぞる指先は熱かった

何を指しているのか意図がわからず口ごもっていると、真っ黒の瞳が私を捕える

北斗「痕がついてる、」

『っ、』

私はなんて馬鹿なんだろう

鏡で見える範囲にそんなものは無かった

けれど今まさに北斗さんの指がなぞるところ

そこには紅い痕が残されているのだ

誰に付けられたなんて思い当たるのはあの人しかいない

それをよりにもよって北斗さんに見つけられるなんて、自分の愚かさに泣きそうになる

『あの、北斗さん、これは』

北斗「田中樹さんだろ？」

『…どうして』

北斗「あいつと君が時々会ってるのは知ってる、どういう関係なのかも」

北斗さんの瞳から目を逸らせない

どうして知っているのか？

いつから気づいていたのか？

そんな疑問ばかりが頭を渦巻いて、それらは言葉にならずに私の中で留まり続ける

『ほくとさん離してください』

ようやく口をついた言葉

それを聞いた北斗さんは笑った

いつもの優しい笑顔

でも、その奥深くに隠しきれない怒りが見えた気がした