指先の熱【Hokuto/Juri】 (ページ12)

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『や、ぁ』

また耳に吐息を吹き込まれて、小さく声が漏れた

こんな場所で、しかも電話は樹に繋がっている

そう頭ではわかっているはずなのに強く拒絶できない

膝が震えている立っているのがやっとだった

樹「おい？」

なかなか返事しない私を不審に思ったのか樹が訝しげに問いかけてくる

せめて何か返事しないと、なんでもいいから…

意を決して、樹と呼ぼうとした時

私が声を出すよりも先に北斗さんの手がスマホを攫っていった

「待ってください」と止める間もなく北斗さんは口を開く

北斗「もうこの番号にはかけてこないでください」

樹「……あーー北斗、さんだっけ？」

北斗「部屋にも二度と来るな」

樹「勝手だな、Aがそういったのか？」

北斗「あなたには関係ないことです」

樹「は？関係あるに決まってんだろ。俺とAの問題だろ、お前がそこまで執着する理由はなんだよ」

北斗「分かってるくせに」

唖然とする私を置いてきぼりにしたまま、二人の会話はどんどん進む

我に返り取り返そうとスマホに手を伸ばすも、制するように北斗さんの手が頬に触れた

さっきまでの強引で少し乱暴な仕草とは違う

優しくて温かい、そっと壊れ物を扱うように指先で私の唇をなぞる

北斗「彼女は俺のものだ」