指先の熱【Hokuto/Juri】 (ページ11)

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北斗「君が…」

北斗さんが言いかけた時

無機質な着信音が部屋に響く

確認するまでもない、私のポケットの中でスマホが震えている

それにいち早く手を伸ばしたのは北斗さんで、発信者が誰なのかを確認するとそのまま私に渡される

ディスプレイには無常にも今一番見たくない名前が表示されていた

北斗「A、出て」

『！、でも』

北斗「Aが出ないなら俺がでよう」

北斗さんの吐息が耳に直接入り込んで、びくんと身体がはねる

逆らうことなんてできず、震える指で通話ボタンを押した

『もしもし』

私と北斗さんしかいない静かな会議室に、樹の声が響いた

樹「もしもし」

『ひっ、…』

"ごめんなさい、今は取り込み中なんです"

そう答えるつもりだったのに、密やかな吐息だけが漏れた

原因は、通話が開始されると同時に北斗さんが私の耳を甘噛みしたからだ

ふにふにと痛くない程度に何度か噛み付かれたあと、今度は耳の縁を熱い舌がなぞる

そんなことされてはもう声を抑えることに必死で、樹の問いかけに返事なんかできない

樹「部屋にライターなかった？か昨日忘れたっぽくて」

樹の声は北斗さんにも聞こえているはずだから、忘れたライターの話なんて私の部屋に泊まりましたと言ってるようなもんで

北斗さんはついにシャツの裾の中に入ってくる

腰を撫で、背中をなぞり、素肌の熱を伝えた

次に舌先が首筋をつたい、うなじにチクッとと軽い痛みが走る

そこはきっと北斗さんに痕があると指摘された場所だ

北斗「上書きな」