第１３話 大切な人 ページ15
「‥‥‥は？」
私はまだ学級の教室内だったにも関わらず、手紙の宛名に声を出していた。
「間違えか？」
センセイがそう聞いてきた。私は冷静さを取り戻す。
「いえ、私宛てで間違いないです。失礼しました。」
私は軽く腰を折って謝ると、無言で手紙を開く。
内容はとてつもなく不快だった。
いわく、跡継ぎがいなくなったから生めだの、とりあえず戻ってきて財政を立て直せだの‥‥‥
私は手紙をファイヤーで燃やした。
その暴挙に驚いたような声も聞こえたが、私は無視して教室を出た。
「あ、アッシュさん。」
怒りを押し込んでフラフラと歩いていた私は、大聖堂で同じ学級のアッシュさんと出会った。
彼はどうやら酷く沈んでいるようだった。
「‥‥A‥さん。」
私はその落ち込みっぷりに流石に放っておけず、言い訳を考えながら隣に腰をおろした。
「どうしたんですか。」
「いや‥‥‥あの‥‥
ロナート様は、なんで僕に言ってくれなかったんだろうって‥‥どうして‥‥どうして‥」
これは酷い。
私はアッシュさんのいうロナート様が、今度の課題に関わりが深いガスパール城の領主だったなと思い出した。
たしかアッシュさんは養子だったんだっけ？酷いことするわよ、セイロス教って。
「言わなかったのは、アッシュさんが大切だったからじゃないんですか。
大切な人には、自分のどす黒い感情から離れていて欲しいものですから。」
「はい‥‥‥そう、ですよね‥」
アッシュさんは曖昧に頷く。
私は彼を救う術を知らなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
沙羅 - 面白いのでここで終わってしまうのは勿体ないと思います (2021年9月16日 20時) (
レス) id: becaa0688f (このIDを非表示/違反報告)
沙羅 - 風花雪月の作品はあまりないし、こういう手の作品は好きです。続きがとても気になります。作者さんのペースでいいので、更新して下さったらとても嬉しいです！ (2021年8月4日 23時) (レス) id: 7db30957d2 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅 - 面白いです (2021年7月24日 23時) (レス) id: 8b2279e27c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千寿こい | 作成日時：2020年2月9日 12時
