思いよ、届け (ページ5)

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翔ちゃんのサッカー大会が終わると嘘のように体調が良くなった。

で、次はまーくん。

から揚げが大好きだから自分でも作りたい！て言ってお母さんと一緒に作ってた時。

から揚げが出てくる日はいつも手伝ってて、得意料理とまで言ってたから

「1人で作るね」

とその日もいつものようにから揚げを揚げていた。

僕は部屋でゲームをしてうたた寝をしていた時だった。

ガチャンッ

「…？」

突然大きな音が聞こえて眠気が一気に覚めた。

きゃー！雅紀！！
かずっ…！

僅かな声が聞こえそこに名前を呼ばれた気がした。

恐る恐るキッチンへ向かうとまーくんが倒れてお母さんが泣いている。

「ど、どうしよう…きゅっ救急車……

かず、」

僕を見つけると目を一層見開いて動揺しているみたいだ。

「お母さん、まーくんどーしたの？」

ううぅ、と唸っているまーくん。
どうやら鍋がひっくり返ったらしい。

…火傷！火傷してる

「だめよ！こっちに来ちゃだめ！！」

お母さんの大きな声がキッチンに響き渡る。

え…。

はやく、早く救急車を呼んで！
僕に訴えかけるその眼差しは震え上がるほど狂気に満ちたそんな目をしていた。

僕がまーくんに涙を落とせば済むんだよね？

心の中の誰だか分からない、返事もしない人に問いかける。

教えて。この状況、僕は本当に助けられるの？

"大丈夫よ。怖がらずに涙を落としなさい。ゆっくり瞼を閉じて、そう。いい子よ"

すぐそこに居るお母さんは焦った表情で何かを喋っているけど何も聞こえない。

誰だか分からない声が身体中に響く。

その声に導かれるようにあの感覚が蘇ってくる。

潤くんと翔ちゃんを助けた時のあの感覚。

目頭がじんわりと熱くなって、目元からまーくん目掛けて
まるで装置でもついてるかのようにまーくんを捉えたように綺麗に落ちていった。