思いよ、届け (ページ3)

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次は翔ちゃん。

翔ちゃんはすごく優しいの。

怒った時は鬼のようにこわいけど(笑)

そんな翔ちゃんが中学生だったとき僕はまだ9才であの出来事は幻だった、と潤くんと約束して2人だけの秘密にしといた。

翔ちゃんはサッカー部に入部して毎日頑張っていた。もうすぐ大会が近いから帰りも遅くなって、

「翔ちゃん、大丈夫かなぁ」

まーくんの口癖がこれ。

最近部活に勉強にやけに張り切っている。

だけどそんなある日足を引きずって帰ってきた。
泥だらけの練習着とボロボロの身体。

そして、一点を見つめたまま焦点が合ってない瞳。

「翔？どうしたの？」

お母さんとお父さんが聞いても首を強く振るだけで何も言葉を発しなかった。

ご飯も食べることなく、朝になった。

病院に行こう、とお父さんが引っ張っていくけど

「嫌！！やめて！やだー！！」

壊れたように暴れ回る翔ちゃん。

僕たちは何も出来ずにそっと見届けるしかなかった。

病院から帰ってきた翔ちゃんはぐったりとして、足にはギプスをはめて松葉杖を持っていた。

涙でぐちゃぐちゃの顔。

「カッコイイ顔が台無し(笑)」

智にぃのフォローにも応じずに静かに部屋に入っていった。

サッカーの大会は一週間後。

出場は絶望的だった。

その時、

"和也、翔くんを助けてあげなさい"

夢とおんなじ声が僕の耳に響いたと同時に操られているかのように翔ちゃんの部屋に入る。

なんだろう…意識はあるのに身体は自分のものじゃないみたい、、

ベッドでヒックヒック泣いている翔ちゃんの足元に座り、何故かわからないけど目頭が熱くなるのを感じた。

そこからはあまり記憶がない。

気がついたら僕の部屋のベッドにいた。

目を開けるとお母さんがにっこり笑っていて何かを言っている。

でも聞こえない…

身体がすごく重たくてでも寒くて、頭が割れるように痛くて喉が切れるように痛くて。

僕は丸1日眠っていたそう。