四ツ目神 Ⅱ【JW】 (ページ40)

今日:4 hit、昨日:3 hit、合計:10,342 hit

－５ページ40

俺は死んだあと、四ツ目神となった弟の隣に埋められた。

そして、四ツ目神の守となった。

氏子の願いでこの土地に縛り付けられた。

緑『こんな、寂しいとこで……』

産まれて間もなく殺された弟は、どれほど無念やったやろうか。そしてそれを縛り付けて神にしようなどとは。

殺された弟のタタリを恐れてって言うけど、それすらも利用して富と繁栄を得る人間こそが、邪そのものじゃないやろうか。

緑『すまんかった……』

俺が、生き残ってしまって。

緑『すまんかった……』

双子として産まれてしまって。

緑『すまんかった……』

助けてやれやんと。

俺の謝罪に、返事がくることはなかった。

きっと弟は俺を恨んでるやろう。
俺の生は、弟の犠牲の上に成り立っているんやから。

何百年もの時を経て、彼岸の庭の彼岸花は増えてった。

この彼岸花の下に、どれほどの骸(むくろ)が眠ってるんかも分からへん。

四ツ目神の守としてこの神社に存在した俺は、ずっと一人やった。

やけど、ときおり迷ってしまったんか、寄り道をしたかったんか、四ツ目神に取り込まれやんと俺と同じように魂の姿が顕現(けんげん)する“いらない子”がおった。

決まって俺はこう尋ねる。

緑『中間の家が憎い？』

『憎い』

緑『死にたくなかった？』

『生きたかった』

緑『寂しい？』

『寂しい、悲しい、苦しい』

『生き残ったあの子が羨ましい。だって、欲しかったすべてを持ってる……あの子が憎い』

まるで弟の心を代弁するような返事や。

そんな子どもは、いっとき俺の同居人として一緒におるけど、いつの間にか四ツ目神に取り込まれておらんくなってしまう。

何人も、何人も、そういった魂と出会っては別れを繰り返し──俺は一人であり続けた。

ダイキとリュウセイも、親に“いらない子”とされた子どもやった。

この子らも今までの子と同じように、きっと孤独に耐えられへん。

いつかは俺から離れて四ツ目神のもとへ行くやろう。

そして俺は、このままゆっくりと寂れていくあの村を見守りながら、許されることなく消えていくんやろう。