四ツ目神 Ⅱ【JW】 (ページ31)

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－望ページ31

「もう、神社から出られるのかな」

桃「ああ、もう誰もAの邪魔はせえへんよ」

「でもちょっと名残惜しいかも」

桃「早く帰りたがってたくせに。ま、ゆっくり鳥居まで行けばええよ」

「うん」

後は帰るだけだ。

私は、もう一度本殿の中へ足を踏み入れた。

「ここで忌み子送りの儀式が行われていたの？」

桃「そうや」

「……」

桃「……彼岸花の花・茎・根のすべてに毒が含まれてるんや。とくに球根に一番強い毒があって、体内に摂取したら嘔吐や下痢等の症状が出る。んで最悪の場合神経が麻痺して呼吸困難で──死に至る」

美しい花に隠された毒にヒヤリと寒気がした。

桃「でも球根一つ食べたからって致死量には至らへん。それなりの加工が必要なんや。大人やったら死なへんけど、七歳未満の……まして産まれたばっかり赤子には劇薬にも等しい。
死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、剃刀花(かみそりばな)、狐花(きつねばな)、そんで……捨子花(すてごばな)。こんな名前がつくんも分かるやろ」

「…うん。どうして双子が、その、忌み子だなんて」

桃「今じゃ双子とか珍しくもなんともないけどな。人間は一回の出産につき、一人産むんが大多数や。それは今でも変わらへんやろ。一人が当たり前、やのに二人三人産む人が時々現れた。不吉の予兆って考える人がおったんや。モノノ怪やとか、心中した人間の生まれ変わりやとか、迷信がうまれた。そんで、二人以上産む姿は、まるで犬猫や家畜のようやと言われたんや」

「チクショウバラの女ってまさか」

桃「畜生腹(ちくしょうばら)……双子以上を産んだ女性への侮辱や。絶対に許されへん言葉。まったく馬鹿みたいよな……でも、そういう文化があったんは事実なんや」

「……うん」