四ツ目神 Ⅱ【JW】 (ページ3)

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「神社に来たからには、やっぱりお参りするべきでしょうか」

緑「急にどうしたん？」

「参拝したいんですけど、お賽銭持ってないんです」

桃「五円玉なくしたって正直に言いや」

「……」

緑「お賽銭がないから参拝したらあかんって、そんな決まりはあらへんよ。あるに越したことはないけど、マイちゃんはそもそも学生さんやし」

「じゃあ参拝しても良いんですか？」

緑「もちろん。参拝方法は知ってる？」

「実はよく知らないんです。教えてもらえませんか？」

緑「もちろん。じゃあ賽銭箱の前で軽く会釈をして本坪鈴(ほんつぼすず)を鳴らすんや」

「本坪鈴って、この大きなヒモのついた鈴のことですか？」

ほんつぼすずって名前なんだ。知らなかった。

緑「そうやで。本坪鈴を鳴らしたら、お賽銭を入れて“二礼二拍手一礼” 二回お辞儀をした後、二回手を打ち鳴らして、そしてもう一回お辞儀をすればええんやで。

神社では拍手をするけど、お寺では音を出さんと手を合わせるだけなんよ、知ってた？」

「…よく分からなくてゴチャゴチャにしてた気がします」

桃「見えるわ。仏壇の前で手を叩くマイの姿が」

手じゃなくてその頬を叩いてやろうかと思ったが、グッと我慢した。

緑「神社の本坪鈴は呼び鈴の役割や。そんで神道では手を叩くことを柏手(かしわで)って言うて、邪念を払う効果があるんよ」

そうなんだ。
私は両手を見て、手をパンッと叩いた。

「ダイキくんとリュウセイくんのいたずらって、今回に限った話じゃないんですよね？」

緑「そうやで、数え切れやんほどいろいろとやってくれるわ二人は。困ったもんよな、最近やと鈴破壊事件で一騒ぎしたなぁ」

「鈴破壊事件？」

緑「お賽銭箱の上に本坪鈴があるやろ？アレを鳴らすんがたいそうお気に召したようでな、右の本坪鈴を何度も何度も鳴らしたあげく、ついには根本から千切れて壊してしまったんや」

「それは……またえらいやんちゃっ子ですね…」

緑「監督不行き届きやで、なぁイミゴ」

カミヤマさんは含みのある笑みを浮かべながら視線をやった。

桃「その監督を育てた奴の顔を見てみたいもんやな」