背中合わせの私達

IMPACT_8 ページ8

『うん。組対絡みで出たご遺体がウチの別チームに回ってきたんだけど、陣馬さんが引っかかってる部分があるらしくてね？私は解剖に参加してないから報告書のコピー貰ってきたの。横流し〜、なんつって。ちゃんとウチの所長の許可は取ってきたけどね？』
「横流しはダメだ当然だろ阿呆」
『そーだね！…でもこれはUDI側の意見を突っぱねられた案件だから？私達としては再捜査してもらうことに異議はないし寧ろ大歓迎なわけ。…ウチは警察の【味方】じゃない。権力に屈さないし、圧力も掛けられない。私達が作った書類にあるのはご遺体が伝えてくれた【事実】だけよ』


凛とした声、意思の強い瞳。きゅっと上がった口角と挑発的な口調。本当に、こういう瞬間の彼女は─美しい。


『さ！一未は今日このまま終わりだよね？私はこれ渡したらラボだから宜しく！夜ご飯出来てるから一眠りして起きたらのんびり待っててね！』


紙袋は先に持って帰れとばかりに俺に押し付けて、白衣を翻して去っていく。
カツンカツンと鳴らすヒール。見たところ5センチはありそうなそれを履いても俺の胸ほどまでしかない小さい身体で、いくつもの闇に葬られかけた真実を掬いあげてきた。


「ね、志摩ちゃん」
「…何だ」
「今キュンとしたでしょ」
「…まぁ、な」


何度でも、惚れ直す。

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