背中合わせの私達

IMPROVE_3 ページ18

こちらで話をしている間にざっとした検分は終えたらしい。凶器はアイスピッケルや錐のような細長い鋭利なものだということが判明したとのこと。現在の見立てでは死因は外傷による失血死。今後他の見落としがないかをラボで洗っていくことになる。

「あ？被疑者見つけた？追いかけるってお前袖だけ…ふわっとしてんな……はいはい、田辺な、わかった取り敢えず自宅から探る。あ、そうだお前、現場に嫁さん来てるぞ」
『伊吹くんに言っていくスタイルなんだ』
「いや、電話口は志摩。あ？代わる？…Aちゃんに代われってよ」
『えっ、…もしもし？一未？』

唐突に渡された陣馬のスマホに困惑しつつも一未からの電話とのことなので取り敢えず応答を待つ。すると少しの間の後に声が聞こえた。

「A、鑑識の代わりか？」
『うん。もう現場での作業は私以外が終わらせたからもうラボに戻るけど』
「そうか、一応、いちおう！被疑者を追っているが今のところ一致したのは着衣の1部だけ。…近辺に本物の犯人が居てもおかしくない。気をつけろよ」
『おぉ…一応のとこゴリ押してくるのは何だかよくわかんないけど、なんか警察っぽいね…わかった』
「いや警察だから。…伊吹のふわっと推理からの追尾劇だからどうなるか分からないけどな。じゃあ、くれぐれも気を付けて帰れよ」
『うん、一未も気を付けて。もう事故だめよ？』
「…分かってるっ」


ぷつりと切れた通話を確認して、スマホを陣馬へと返す。旦那はなんだって？なんて茶化されるのにも慣れているので、心配してました。あーんど伊吹さんに怒ってました。と素直に答える。九重は志摩とのやり取りに驚いているし、過保護だなぁとまた豪快に笑う陣馬とその反応に引き気味の九重のコントラストが面白いコンビだ。
2人は被疑者が乗っている車の持ち主である夫婦をあたるとのことで現場を去っていった。

「おい、お前がダラダラくっちゃべってる間に終わったぞ」
『系さん言い方！！資料貰ったりしてたんです！！』
「雑談しててこっち手伝わなかったのは事実だろうが」
『…すみません』
「まぁいい、この後ラボで細かく調べる。凶器の特定は成分分析で行うのが早いか…犯人が捕まるのが早いか。」
『外傷部分の組織から成分を抽出します。帰って確認しましょう』
「A、坂本、戻るぞ」
『「はい」』

IMPROVE_4→←IMPROVE_2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す