IMPACT_1 ページ1
《仕事へのモチベーション》は、人それぞれだと思う。お金だったり、成績だったり、家族だったり。俺たち警察なんかは、正義とか、そんなものを心の真ん中に置いている奴もいるだろう。俺の隣でバカでかい文字で始末書を埋めている男のように。
「っあー!書けた!書けたよ志摩ちゃん!!」
ガタン、と大きな音を立てて机に突っ伏した隣に視線を投げてキーボードを叩いていた手を止める。首だけを此方に向けて捨てられた犬のような目をした男が渡してきた紙には持ち上げなくても読めるほどのサイズの平仮名ばかりで書かれた2行。
「【大切な車をこわしました。ごめんなさい。】」
「うん!いや〜、今回のはほら、イレギュラー中のイレギュラーじゃん?人が轢かれるかどうかのギリッギリだった訳だし、車壊したとこくらいしか怒られるとこ無いかなって思って!」
俺が読み上げると同時に伏せていた身体をがばりと起きあげたと思えば、つらつらと並べ立てるのは、まぁ相変わらず頭を抱えたくなるような言葉ばかり。これが俺の相棒だと言うのだから本当にどうかしてると思う。
「伊吹」
「ん?なぁに志摩ちゃん」
にこり。擬音を付けるならばきっとそう。そのくらいに口元だけを弓なりに動かしてから始末書を持ち上げて、両手で破り捨てた。
「え、ちょいちょい志摩ちゃん?!」
「はいおめでとうございます、やり直しです〜」
「えー!!」
「お前始末書得意とか言ってなかった?」
「言った!これで通ってた!!」
「奥多摩どうなってんだよ…」
溜息は無意識に深くなる。対面に座っていた九重が迷惑そうに音がうるさいと伊吹へ苦情を入れている。まぁそれもそうだろう。始末書を書き始めてからこの一文を書くために小一時間は呻いたり暴れたりしていたもんなのだから。
「志摩さんまだ帰らないんですか?僕はもうそろそろ上がりますけど」
「あー…お疲れ。俺はコイツの始末書確認してから帰るわ」
「…良く面倒見ますね。ある種尊敬します」
「そりゃどーも。まぁ珍獣の世話係に任命されたからには仕方ないだろうな」
テキパキと書類を鞄へと詰め込みながら九重は伊吹を見下し続ける。素直な視線ですこと。ふいと目を背けて、隣で新しいまっさらな始末書の紙を持ったまま拗ねる伊吹を眺めた。
315人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Satokusa(プロフ) - 瑠璃さん» ありがとうございます。亀足更新ですがゆるりと楽しんで頂ければ幸いです。 (2020年10月30日 1時) (レス) id: d062a6dbf1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - アンナチュラルとコラボ。どちらも好きな作品で志摩さんの奥さん!お話凄く気に入ってます。更新楽しみにしています。 (2020年10月28日 6時) (レス) id: 9070337cc8 (このIDを非表示/違反報告)
Satokusa(プロフ) - すさん» 失礼しました。ずっと変換ミスってますね…訂正致しました。ありがとうございます。 (2020年10月15日 22時) (レス) id: d062a6dbf1 (このIDを非表示/違反報告)
す(プロフ) - 初めまして。しまの"ま"は麻じゃなくて摩ですよ! (2020年10月15日 7時) (レス) id: 5fe99a0fc6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Satokusa | 作成日時:2020年10月14日 1時