＃19「楽しみは」 ページ20
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「あ、先生」
『もう死ぬな、アンタが死んで喜ぶ奴なんていない』
「・・・フッ、先生って本当に面白い方だ」
それからしばらくして、秋本さんが退院した。冴島も元気そうで何よりだ。
「あれ？和解したんだ」
『まぁ、死ぬ気のない患者は好きだからな』
「アンタって、ホント性格が外科向きよね。精神なんて行ったら終わりね」
『ハハッ、確かにな』
「あれ？今日いつにも増して気分良くない？・・・あぁ〜なるほどね。分かりやすっ！」
『え？』
「ホントそういうところ天然っていうか、鈍感ね。楽しんできなよ？」
『うん』
今日は、新海と映画に行く日。実を言うと、あの映画は私も気になっていたものでワクワクしている。それに今日は、何があっても待ち伏せすると決めている。いつも新海に絡まれて行くのがなんだか癪に触る。たまには奇襲を仕掛けるのも悪くないだろう。私は、仕事を早めに終わらせて医局を後にした。
「あれ？もしかして、内海先生？！」
『奏ちゃん！お久しぶり、診察終わり？』
この子は、天野奏ちゃん。天才ピアニストと称されるほどの実力を兼ね備える脳外科の患者の子だ。
「うん。・・・それより！先生、今まで何してたの！？いきなり脳外科からいなくなって」
『実は・・・』
「救命に行ったんだ」
『・・・新海』
そこには、私服に着替えた新海がいた。
「コイツが藍沢と同じようにフライトドクターのライセンスを持ってるって前に言っただろ？」
「あ〜！なるほどね！救命ってそんなに忙しいの？」
『まぁね、病も事故もいきなり起きるものだからさ？』
「まぁそういうことだ。さ、高校生は早く帰る帰る」
「とか言って、本当は先生が内海先生と一緒にいたいだけでしょ？分かりました！帰りますよ」
また、藍沢のところに行くんだろうな、なんて呑気なことを考えながら奏ちゃんの後ろ姿を眺めていると、上から声がした。
「おまたせ」
『もう来てるだろ』
「も〜、素直じゃないなぁ。奏ちゃんといる時はあんなに優しそうなのに」
『いいだろ、別に』
「じゃあ、行こうか」
新海は、私の手を引いて脳外科のセンターを後にした。
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作者名：少年A | 作成日時：2019年9月10日 21時
