＃16「衝突」 ページ17
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「なんで、死なせてくれなかったんだ・・・」
『・・・アンタが、アンタがあんな大きいところで死のうとするからだ』
「内海！」
『アンタは、止められたかったんだよ。それだけで何人もの命を危険に晒した。アンタがやったことは立派な殺 人未遂なの』
「なんなんだ君は！」
『アンタが殺 しかけた看護師を処置した医師だよ』
「内海・・・下がれ」
フェローに呼ばれた先にいたのはあの患者だった。逃げようと思った矢先の出来事だった。
『衝突は免れなかった・・・』
「内海先生ってあんな感情的になるんすね」
『名取か・・・』
「正直、驚きです」
『失望しただろ、こんなやつなんだよね。結局』
「いえ、むしろ凄いと思いました。あんな感情的な人なんだって」
『嫌な性格だよ。いらない性格』
「でも、あれは患者を生かそうとしてました」
『実は、あれで法廷まで引きずり出されそうになった。まぁ、未遂で済んだけど』
「大変っすね」
『でも、これでも大人になった方。昔は、掴みかかってたし』
「危ないですよ、それは」
多分、救ったからだと思う。救ったから。せっかく救われたのに死のうとしたから。
『名取、世界で毎秒何人死んでると思う？』
「え？分からないです」
『正解は、約2人。毎秒2人死んでる。それで、8秒に1人自ら命を絶っていて、24秒に1人交通事故で命を落としている。私たちが救えているのは、どちらかと言えば、毎秒の方じゃなくて、8秒の方でもなくて、24秒。この間で、48人死んでる・・・私、このこと知った時、悲しくなった。私がやってることって、こんなにもちっぽけなんだって。だから、勝手なこと言われるのは腹が立つ、お前らは生きられてるのにって、この病院にも迫り来る死と必死に向き合ってる子もいるのに』
「内海先生って、凄いんすね」
『え？』
「そんな中でも、必死に患者を救ってる。俺なら嫌になっちゃいますね」
『それで、励ましてるつもり？』
「さ、どうでしょうね」
名取の優しさに気付かされながら、私は自分の仕事に移った。
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作者名：少年A | 作成日時：2019年9月10日 21時
