＃12「緊急事態」 ページ13
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『白石？お応答できるか？』
「機内が汚染されてる・・・多分、患者の吐瀉物だと思う。吐瀉物がかかった冴島さんが意識不明」
『了解。白石、自分の症状、言えるか？』
「めまい、吐き気、呼吸困難・・・」
『分かった』
ヘリ機内の無線からは、そう告げられた。
「内海、分かってるな？」
『あぁ、分かってる』
私は、みんなに指示を出す。その間に藍沢は、処置室の準備をする。途中で橘先生も合流し、迅速な対応をしていく。
「受け入れの準備はできてるな？」
「『はい』」
意識不明の状態で運ばれてくる冴島。今にも目を瞑りたくなるが、救うことが最優先だ。私は、白石から聞いた症状だけで当てはまりそうな毒物を上げていく。でも、これだけでは断定が難しい。
『救いたいのに・・・』
「はるか！・・・内海！はるかが意識不明になってから何分だ？！」
『・・・20分弱だ』
「それじゃあ、死亡のリスクも・・・おい！お前なら救えるよな？救えるよな！？」
『分かってる、でも見てみろ。当てはまりそうな毒物のリストだ』
「そんな・・・、こんなに・・・」
『なぁ、白石、灰谷。もう一度思い出してくれ』
白石も灰谷も冴島のために必死に思い出そうとしている。二人だって、意識は朦朧としていたはずなのに・・・。
「あ、甘い・・・甘い匂いがしました」
「甘い匂い・・・」
『シアンだ。シアノキットをお願いします！』
「シアンは、中毒になると、2つのパターンに分けられる。60%の人間は無臭、40%の人間は甘い匂いを感じ取ることができる。灰谷はたまたまその40%の方だった。お前は、冴島の命を救ったんだ」
藍沢が、灰谷を諭している間に冴島たちの治療にかかる。にしても、シアン中毒なんて。この患者、自 殺しようとしてたってこと？疑念がどんどん湧き上がってくるのが分かる。
『私、席外します』
「内海・・・」
今自分が治療したら、きっと患者を死なせようとする。きっと許せなくて、人巻き込んで死のうとしたって思っちゃう。
『最低だ・・・』
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作者名：少年A | 作成日時：2019年9月10日 21時
