ドキドキの体育祭 その1 ページ7
「やるぞー！！二年四組！！！」
「「おー！！！！」」
ついにこの季節が来てしまった。
俺にとっての絶望の行事、体育祭。
しかも運がないのか、俺は毎年リレーに当たってしまう。
泣き叫びたい衝動に刈られるが、青いはちまきを友達に巻いてもらっている冬野原さんを見て和む。
「次の借り物競争あんたじゃないの？」
「・・・うん」
「頑張ってください、冬野原さん！」
「俺、大体のものは持ってますから！！」
「頑張ってくる」
俺と目が合うと、冬野原さんは小さく手を振ってくれた。
・・・付き合ってないんだよなぁ！(絶望)
「位置について・・・よーい、ドン！！」
合図と同時に全力で走り出す冬野原さん。
俺と比べて運動神経がいいので速い。
ひょい、とお題の紙を拾い上げていつもの無表情のままその場で長考する。
他の選手が紙を拾い出した時、冬野原さんはこっちに向かってくる。
「貸して」
「このラケットですか？」
「それとも帽子ですか！？」
「やっぱり消火器ですよね！」
「・・・藤谷君」
「お、俺？」
しっかりと俺の手を掴んだ冬野原さんは、凄まじいスピードで走る。
けど運動神経中の下である俺がついていけるわけもない。
それに気づいたらしい彼女は、俺を軽々抱き上げた。
周囲からの俺に対するブーイングが盛大に巻き起こった。
というか普通に恥ずかしい。
我が校の借り物競争は実はリレーより走る距離が長い。
お題がその三まである時点で察してほしい。
そして広い上げたお題その二。
【バク転をする】
クリアさせる気があるのだろうか。
俺ならまず無理だ。
これを企画したクラス委員の松田の元まで走り、「まああぁつだああああぁっ！！！」と自称新世界の神よろしくで叫ぶことだろう。
冬野原さんは無表情のままで軽々やってみせたが。
・・・なんだか悲しくなってきた。
明日からランニングしようかな。
お題その二。
【借りた物の好きなところを発表する】
これは本来、教科書などを当てた人間が「あらゆる知識を伝授してくれるところ」などと言って乗り切るところだが、今回は人(俺)だ。
彼女にぞっこんな男(男子全員)がドキドキすることになる。
マイクを渡された彼女は、無言で固まる。
それはあれなのか。
「好きなところなんてない」ということかのか。
だとしたら悲しみでこんなお題を書いた松田に当たりに行くことになるが。
「・・・」
ちらり、と抱き上げている俺を見てから、冬野原さんは小さく口を開いた。
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作者名：甘楽 | 作成日時：2018年9月4日 18時
