居酒屋妄想日記 ４冊目

明るい空間 ページ40

〆．



「美味しいと思うんですけどねぇ」



赤「酒飲みながらつまめたらええんやけど」



「まあ……ほとんどのお客様はお酒飲みますもんね」



赤「でも、どの酒に合うんやろ？チーズはあるしな」



ただいま、大毅くんと悩み中。



質素なリビングには、テーブルとカーペットとソファがあるくらいだけど、



大毅くんがいるだけで一気に明るい空間になった気がする。



ちなみに、うちの家庭の事情は帰り道に簡潔に説明しておいた。



大毅くんは少し困った顔をし、「なんではよ言わんねん。もう今日から連泊するわ」と頬をふくらませていた。



「んー！難しい〜」



今あるメニューと比較して、足りないものをピックアップ。



赤「やっぱ創作料理もウリやから、独創性のあるメニューやんなぁ」



むむむ、と悩みながら鉛筆を弄ぶ大毅くん。



こういう面でも真剣になるんだ。



また一つ違った大毅くんの顔に、つい見惚れてしまう。



赤「……………なんやー！Aー！！」



き、気付かれちゃった。



「わっ！や、違うんですっ…ひい！」



大毅くんのこちょこちょ攻撃。



くすぐったくて身をよじらせると、大毅くんの手は止まったけれど、



近付いた体の距離は変わらないまま。



「…………………、」



赤「……………………」



「な、なんで急に黙るんですか」



赤「……んー、考え事してた。幸せやな、って」



「えっ……」



まさか、そんな優しい顔されるとは。



赤「Aがさっき話してくれたやろ、父子家庭ってこと。ずっと寂しかったやんな。



やから、これからは俺が、Aの陽だまりになれたらええなぁって思う」



「大毅くん……」



赤「その笑顔も、この幸せな時間も、守り続けたい」



恥ずかしいのに、目がそらせない。



赤「……俺に、恋を教えてくれてありがとうな」



大毅くんの顔がゆっくり近づいて………



「……あっ！！！！」



赤「ひえっ！？」



「すみません！ちょっと新メニューのアイデアが出たので、試作しますっ！」



バタバタとキッチンへ駆け込む。



大毅くんとの会話で思い出した。



お父さんが、おやつに作ってくれた簡単な料理。



赤「んも〜惜しかった……」



大毅くんはキッチンの向かいのカウンターから私の様子を見ている。



「小麦粉と……ダシと……卵……」



記憶を頼りに、フライパンを取り出した。



〆．

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