居酒屋妄想日記 ４冊目

おやすみ ページ43

〆．



先にお風呂に入り、何も無い静かな部屋で、



向かい合って牛丼を食べる。



大毅くんと過ごす時間は不思議なほど会話と笑いが絶えなくて、



きっと友達も多いんだろうなと思わせるほどだった。



テレビもゲームもマンガもないこの空間で、大毅くんは楽しいのだろうかと不安になっていたけれど…。



赤「ほんでな？そん時神ちゃんの足が……」



「ええ！？それで大毅くんはどうしたんですか？」



赤「ひゃひゃひゃ！よくぞ聞いてくれた！俺はもちろん……」



すごく楽しそうにしてるから、ま、いっか。



左目の下にできるえくぼをじっと見ていると、「なんやねん」とアヒル口の上目遣いのあざとさを見せてくる。



「可愛くないですよ」



赤「嘘つけぇ」



「嘘です」



赤「……それもリアクションに困んねんけど」



そこで、会話が途切れた。



赤「………なんかさ」



「はい？」



赤「Aとこんな長い時間、二人きりでおったことってなかった気ぃするな」



だらんとした態勢で、大毅くんが笑う。



「そうですねぇ。ゆっくり話せて嬉しいです」



赤「んん……」



「あれ、眠いですか？」



牛丼を頬張りつつ、大毅くんはうとうと。



とか言って、私も危うかったりしてね。



「頑張りましたもんね、朝方まで考えたりして」



赤「あのさぁー……」



うわ、眠そうな声……。



赤「こっち、こっち来て」



床にぐでーんと寝転がった大毅くん。



「はいはい、行きますよーっと……え、」



腕を引っ張られて、腕の中へ。



赤「ほーんま、親方にはいっぱいお礼してもらわななー……」



もう目は閉じてるんだろうな。



口だけ、笑ってる話し方。



「ですね……美味しいご飯でも作ってもらいますか？」



私ももう……。



赤「せやなぁ………そしたら店で一番高いやつ……」



「……………………」



赤「…………A？」



「………………………」



赤「………寝てもーた……。んふふ、おやすみ」



最後に一瞬だけ力が込められて、そのまま腕が緩み意識が途絶えた。



一瞬おでこに柔らかい何かが触れた気がしたけれど、



夢か現実かはわからないまま。



〆．

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