居酒屋妄想日記 ３冊目

おまじない ページ29

〆．リクエスト



またしても、バイトと女の子の日が被った。



出血が酷いのは二日目だけど、



痛みは一日目が一番酷い。



「………………………」



お客様が全然来ない曜日で、安定の照史さん、淳太さん、智洋先輩と。



緑「今日はのんびりできるわぁ」



三回生になってから、智洋先輩は(流星先輩もだけど)シフトをあまり入れなくなった。



つまり大学が忙しいってことで、だからプライベートでお誘いすることも出来ない。



だから今日は貴重なのに…。



あ、ちなみに大毅先輩は内定貰ったんだって。



卒論書きながら、めっちゃシフト入れてる。



私もそろそろ進路決めなきゃな。



「………いたた」



いや。今は、この痛みに耐えねば。



薬忘れちゃったなぁ。やらかした。



緑「………A、はい」



「え？」



智洋先輩に渡されたのは、温めたお茶。



緑「痛み酷い？無理そうなら言うてな？」



「……………はい」



緑「お客さんあんま来ん日やし、あれやったら上で休んだりもう帰ったりしてもええからな」



照史くんも許してくれるやろ、って。



………なんだか、「おらんくてもええ」と言われているような気がしてしまう。



もちろん智洋先輩の優しさ、気遣いっていうのはわかってるよ？わかってるけど……。



やっぱりちょっと感情のコントロールが上手くいかない。



「ありがとうございます…」



とにかくお言葉に甘えて、少しずつ休みながらもその日のバイトを終えた。



賄いは、とてもじゃないけど食べる元気がない。



「賄い、今日はいいです…」



橙「大丈夫か？帰れる？」



「大丈夫です…」



緑「俺が送ってくから大丈夫。てことで親方！俺も賄いパス！」



橙「誰が親方やねん！どすこい！」



黄「親方やないかい」



聞き慣れたやりとりにも参加出来ずに、智洋先輩と店を出る。



緑「弱ってるAの面倒見るのは、俺の特権？」



「そうですね……他の人はあまりないかも、です」



緑「そか……不謹慎やけど嬉しい」



智洋先輩の唇が、私の頬に触れる。



「っ！？」



緑「痛みが和らぐおまじない」



………不思議だな。



本当に効いてるみたいだから。



〆．

☆登場人物説明(2018年8月現在)→←ニヤニヤ

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