居酒屋妄想日記 ３冊目

ニヤニヤ ページ28

〆．リクエスト



あの一件以来、大毅先輩に対するイメージが少し変わった。



五歳児かと思っていたけれど……



大毅先輩もやっぱり年上で、男の人で、



私のことを守ってくれる。



そんな彼と、今日は二階で一緒になった。



団体予約が入っていて、テーブル席の方を二人で見ることに。



一階は数組の予約、あとは新規で入れるんだって。



火曜日という中途半端な曜日にも関わらず、賑わっていた。



赤「なぁ〜A〜」



どうも大毅先輩は過保護になってしまったらしく、私の事をパントリーに入れた。



生の樽がちょっとしか残ってないから、ピッチャーの方に入れちゃっとこ。



赤「はぁ………客来んかったらAと二人やのにぃ」



「仕事にならないでしょ」



案の定少し出しただけで生はなくなる。



「よいしょ」



新しい樽って重いんだよね。みんな気をつけてね。



紫『二階の二人〜、10番テーブルご予約のお客様ご来店です、案内してよろしいですか』



「はい！了解です、ご案内お願いします！」



インカムの向こうと階段の下から、「いらっしゃいませー！」と元気な声が聞こえる。



そしてすぐに、ぞろぞろと人が上がってくる。



「いらっしゃいませ！」



赤「いらっしゃいませ！そちらのお席へどうぞ！」



あれ。



女性の団体客か……。会社の女子会みたいな？



仲良さげに話す声が聞こえる中、「あのお兄さんイケメンじゃない？」なんて声が混じる。



赤「へへっ！どうも〜」



…………鼻の下伸ばしちゃって。



微かに聞こえたドリンクの注文を覚えていると、あまり聞きたくない言葉が聞こえてきた。



赤「お姉さん方も美人さんやないですか！照れますわぁ」



………多分お世辞じゃないと思う。私も思ったもん。



ふん。



不機嫌にドリンクを作り進めると、大毅先輩が戻ってきた。



赤「テーブル番号順にメモったから！ピッチャーだけ貰ってくな？」



「……はい、お願いします」



私の異変に気づいたのか、大毅先輩は少し目を丸くして、「すぐ戻る」とだけ言い残し客席の方へ。



そして本当にすぐ戻ってきた。



赤「なあ、A。やきもち？やきもちやんな？」



「知らないです」



赤「図星やぁ。……嬉しいな、これ。俺、いっつもそんな気持ちやってんで？」



ニヤニヤが隠しきれない様子。



……惚れた弱み、だな。お互いに。



〆．

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