居酒屋妄想日記 ３冊目

恐怖 ページ26

〆．リクエスト



客「旨いわぁ、店長に言うといて！」



「はい！ありがとうございます」



お客様は４番さんだけじゃない。



３番さんは老夫婦でほんわかしているし、



５番さんは若くて気さくなお兄さん方。



６番さんはカップルかな、仲良さげにお喋りしてる。



………だからこそ、残念。



今日もバイト楽しかった！って言えなくなっちゃう。



「お待たせいたしました、チーズつくねです」



客「おお、ええ匂い〜。あ、そっちの灰皿取ってくれや」



客「ええで〜。……あ、」



灰皿をテーブルの隅から取ったお客様の手がグラスにぶつかり、中のお酒が溢れる。



「すぐに拭くものお持ちします」



おしぼりを二、三取って４番テーブルに戻る。



客「おおきになぁ」



「いえ、」



テーブルを拭いていると、ニヤニヤしたお客様が私の腕を掴んだ。



客「姉ちゃん、ズボンも濡れてもた。拭いてくれへん？」



「えっ、」



太もも辺りが確かに濡れていた。



けど……。



客「はやく」



「っ、」



恐怖と嫌悪感に頭が支配される。



おしぼりも一応濡れてるけどな……なんて気をそらそうとするけど、無理だった。



腕は強く握られているから逃げられない。



諦めて、息を吐いた。



赤「おにーさん方！おしぼりで拭いたら余計酷なりますよ〜！」



客「あ？」



「だ、大毅先輩…」



赤「ティッシュです！こっちのがええんちゃいますか？好きなだけ使ってください！」



客「ああ………そらどーも」



赤「んで、西畑。お前あほやな、おしぼりでお客様のお召し物拭くとか。ちょっとは考えろや。……後で説教な」



「…………すみませんでした」



冷たい声。"西畑"呼び。



初めてで、ただ謝るしか出来ないけれど、大毅先輩の言葉はもっともだった。



頷くと、４番のお客様もそれからは変に絡まなくなった。



それからシフトが終わる11時までに私が担当するテーブルのお客様は全員帰り、ほうきとモップをかける。



橙「Aお疲れ様〜！タイムカード押し！今日もありがとうな」



照史さんの明るい声に安心したけれど、この後大毅先輩と賄い食べるんだよね。



智洋先輩はもう少し残るらしいし、ちょっと怖いな……。



〆．

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