居酒屋妄想日記 ３冊目

寝不足 ページ2

〆．リクエスト



大毅先輩に告白された日から、寝不足が続き体調が優れない。



眠れるわけがないんだ。



だって、人生最大のモテ期が訪れているから。



かといって、「付き合って」は誰一人として言ってくれなくて。



私も誰かを選ぶなんてとてもじゃないけどできないから、案外良かったりして。



「好きって難しいな。……苦っ」



眠気覚ましにコーヒーを飲むけれど、ただ苦いだけ。



カフェインは私に何ももたらしてはくれなかった。



それでもバイトはあるし、時間は過ぎる。



「今日は智洋先輩、パントリーなんですね！」



緑「忙しくないからな、親方だけで十分やし」



橙「誰が親方やねん！聞こえとるからな！」



緑「ありゃ」



舌を出して茶目っ気を見せる智洋先輩にきゅん。



確かに今日はあまり忙しくなくて、ふらふらな私には助かった。



橙「お疲れさーん」



「お疲れ様です！」



緑「お疲れ様でーす」



智洋先輩と二人で店を出て、途中まで一緒に歩く。



「最近暑いですよね」



緑「もうすぐセミ鳴き始めるんちゃう？」



「いよいよ夏って感じですね。あ、智洋先輩夏休みお時間あります？出かけましょうよ！」



緑「お、ええな。俺普段インドア派やけど、バーベキューとかは好きやで！」



他愛ない話なのにふわふわ幸せな空間が出来上がる。不思議。



「あ、智洋先輩あっち方面ですよね、それじゃ…」



緑「待って」



「？」



緑「………家まで送るわ」



「え！？真逆じゃないですか」



緑「ええから」



智洋先輩の、突然まとった有無を言わさないオーラに頷くしかなくて。



申し訳なく思いつつも、もう一つうちの家庭の事情を考えて、困った。



「前も智洋先輩、家に来てくださいましたよね。風邪引いた時……」



緑「懐かしいなぁ。今日も似たようなもんやけど」



「へ？」



智洋先輩が私の髪を優しく撫でる。



緑「家まで送るって言うたやろ、ほら鍵出して」



「あ、はい…」



眠過ぎて、視界が霞む。



鍵を取り出したのと同時に、私の意識は途絶えた。



緑「……っと、危な。良かったわ、送ってきて。ほんならお邪魔しまーっす」



〆．

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