【ハイキュー!!】日と影と山と月と雲【男主】 (ページ14)

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13:「俺」と『僕』ページ14

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1人の少年が大きな体育館に足を踏み入れる
父母に手を引かれて観客席まで楽しそうに歩く
この父母はバレーボールが好きだ

「うわぁ…大きいね！」

そう言うのは、小さな少年
まだ小学生にも上がっていないであろう少年は、会場を見て声を上げた
フロアには選手が公式練習をしている
少年は選手に、ボールに目を輝かせる
父母もそれを見て、笑う

公式練習が終わり、試合が始まる

鋭いスパイク、粘りのレシーブ、正確なトス、狙うサーブ
全てが少年を魅了した
試合が終わった後も、興奮の冷めない顔で父母に語る
そして、真っ直ぐにこう言った

「俺、小学校でバレーやりたいっ！」

その日から少年は毎日バレーの練習をした
小学校にあがり、新しい友達にも出会った
ブロックが得意な月島蛍
パスが綺麗な山口忠
そして、レシーブが得意な少年…東雲A

Aたちは小学校でレギュラー入りを果たした

そして、小学6年生の最後の大会…決勝戦

相手は、中学校との練習試合をこなす強豪だった
主将のAは皆を鼓舞する

臨んだ決勝戦、16ー14でAたちが負けている
ベンチには足首を捻挫した蛍と応援する忠

相手のサーブ、相手のスパイク、チャンスボール
ほとんどAがレシーブをする
彼は、守備に長けたアタッカーであった

「俺が取る」

そう呟き、相手のエースが打ったスパイクを上げる

18ー14、相手に続けて得点が入る

Aはボールを上げる
上がったボールは、セッターが上げる
しかし、焦ったセッターは反則を取られてしまった

「ドンマイ、ドンマイ！次、あげていこう！」

Aは声をかける
セッターは少し言いづらそうにして、おずおずとAに言う

「もう、勝てないよ。俺たち頑張ったって…ここまで来れたんだからさ」

19ー14、相手のマッチポイント

セッターの言葉にAは顔を引きつらせる

「諦めるのか？相手が強いからって…」

セッターは目を逸らす
セッターの肩に手を置いてAは続ける

「…お、俺が拾うから…頼む！」

相手のサーブ
Aは宣言通りレシーブした…がセッターは動かなかった
ボールはそのまま落ち、跳ねて転がった

時が止まった

相手も、味方も、観客も

その日からAは変わった
元気が良く、ハキハキしていた性格が、冷静で冷めているような性格へ
一人称も『僕』に変わった

それでも少年は排球を続ける

「俺は」『僕は』
「『バレーが好きだから』」

続ける理由なんて、それでいい