死んじゃう前の世界で俺は

こっちの世界 ページ5

｢こっちに来る前、何があった？｣


どこまでも深く青い瞳で俺を見つめる




｢刺されたんです｣


優依が絞り出したように言う


｢俺も詳しくはわからないけど…刺されました｣



ふうん、とだけ

後ろにくるっと回った



｢なんで刺されたの？｣


｢……｣



優依がうつむいて黙り込む


沈黙が続く



俺はその空気が嫌で口を開く



｢優依を庇いました｣


｢刺されそうになってたの？｣



｢…はい｣




優依が小さく返事をして



｢でも、最初に刺そうとしてたのは私じゃなくて
公園にいた子供たちだったんです｣



｢へえ、どっちも庇ったんだ｣



俺は初めて知った事実に驚く

優依は子供を庇おうとしてたんだ…



｢でも、優依さん？がここにいるってことは結局刺されたんだ｣



中村さんはニヤニヤしてこっちを見る

図星……

でもそんな姿もまた恐れ多い




｢でも二人ともいい人だね｣


｢｢！！｣｣



中村さんのいきなりの誉め言葉に、思わず驚く



｢きっと神様が生かしてくれたんだよ｣



でも、そう言う背中は何だか悲しそうだった

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