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唇に何かを押し当てられる感覚で目が覚めた。とは言っても、Aは寝ているかもしれないだろうからそのまま目も開かずに寝直そうとしているのだが。
生温い空気が唇に当たる。また唇に何かが触れた。さっきより柔らかい感触だった。
あ……これ、A起きてるな?
そう思った途端、ベッドすら揺らせそうな位大きくなった鼓動が煩かった。俺の顔は真っ赤なんだろう、見なくたってわかる。バレてたら恥ずかしいな。
どうしようもないくらい愛しくなって、俺の首に顔を埋めたAをぎゅっと抱き締めたら、Aの全身から速い鼓動が伝わってきた。それが同じ気持ちでいるような証拠のような感じがしてこれ以上ないくらい嬉しくなった。
「それ、俺がちゃんと起きてるときにやってくれる?」
「ぁ……え?」
こんなこと言ったらキザだよな。Aもきょとんとしている。それから、照れた顔でぼそりと言った。
「嫌じゃないなら、勿論するけど。」
たまにAは俺の事が恋人みたいに好き、なんて目をする。それは俺と全く同じだからそれもこれ以上ないくらい嬉しくて。頭から爪先までお前で満たされていく感覚って言ったらわかるかな。
なのにAが眉を下げて泣いている。何これ、体をズタズタにされるよりもずっと苦しい気がするんだけど……。
どうしたの、と尋ねたらAは言葉に詰まったようだった。あのね、って子供みたいに話し出すAがかわいい。でもまたすぐに話すのが止まる。
「話すの難しいならあとでも良いって。絶対聞くから。」
Aの手が俺の背中に触れた。俺よりも一回り小さいそれに愛しさがこみあげてしまって、ありがと、と呟くAの涙を拭ってキスをした。
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第n回じめじめ大暴れ(プロフ) - Keiyaさん» わ〜ありがとうございます……!生々しさがちゃんと表現できているようで安心しました😌 (2023年2月22日 16時) (レス) id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
Keiya(プロフ) - どの文を切り取っても鬱蒼としているのに耽美ですが、特にp9の最後の一文が好きです。詩的というには思春期の生々しさがあり、とても魅力的な二人に映ります。 (2023年2月22日 15時) (レス) id: 4b5e1eb1f2 (このIDを非表示/違反報告)
けもの(プロフ) - 多分続編に移行します 次の話からかな (2023年2月9日 22時) (レス) @page49 id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
けもの(プロフ) - 受験があるのでもうしばらく更新とまります もしかしたら合間に更新あるかもしれませんが (2023年2月3日 21時) (レス) id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
けもの(プロフ) - ちょんちょんいさん» ありがとうございます〜、もうじき更新できそうなのでゆっくりお待ちください〜 (2023年1月8日 11時) (レス) id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年12月31日 3時