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秋が始まる頃の冷たい空気が素肌に触れて、その寒さで目が覚めた。まだ暗い。時計を見るとまだ3時だった。
「A……?Aや、どこ行った……?」
寝ぼけ眼を擦ってAを探す。普段あんなにスンチョラ、って俺のことを呼んで引っ付いてくるわりに、すぐどっかに行ってしまうからその度に俺は不安になってしまう。依存してるんだろうな、と分かっていてもやめようとはしなかった。
二段ベッドでぎゅうぎゅうの部屋。皆を起こさないようにこっそり出て宿舎の中を見て回ったけど、どこにもいない。焦りだかなんだかわからない感情で頭の血が沸騰するみたいで冷静さを失っていた。震える手でさっきまで寝ていた部屋のドアノブを捻る。
「ただいま。」
「どこ行ってたの……。」
声が震えた。Aの申し訳なさそうな顔からして、多分俺は相当情けない顔をしていたんだと思う。ベッドの上に座っているAの横に腰かけて、体を暖めるようにくっつく。上を着てないから寒いのは当然なんだけど、それ以上にAの不在が俺にダメージを与えていたらしかった。
「練習室に行ってたの。」
「珍しいな、なんでこんな時間に……?」
「面白そうだからちょっと行ってきた。」
「は?」
「ん〜ごめんね……眠いのに起こしたらだめだなって思ってさ。」
「……もうやるなよ。」
「心配した?」
「ん……。」
そのまま二人まとめて崩れるようにベッドに横になる。くすぐったそうに身を捩るAをできるだけ優しく抱きすくめて動けなくした。
「ね、スンチョラ。心配してくれてありがとう。」
「うん……。」
違うんだよ。A。俺は不安だったんだ。素直にそう言えば良かったのに。Aの肩を柔く噛むことでしかこの不満を表すことができなかった。
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第n回じめじめ大暴れ(プロフ) - Keiyaさん» わ〜ありがとうございます……!生々しさがちゃんと表現できているようで安心しました😌 (2023年2月22日 16時) (レス) id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
Keiya(プロフ) - どの文を切り取っても鬱蒼としているのに耽美ですが、特にp9の最後の一文が好きです。詩的というには思春期の生々しさがあり、とても魅力的な二人に映ります。 (2023年2月22日 15時) (レス) id: 4b5e1eb1f2 (このIDを非表示/違反報告)
けもの(プロフ) - 多分続編に移行します 次の話からかな (2023年2月9日 22時) (レス) @page49 id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
けもの(プロフ) - 受験があるのでもうしばらく更新とまります もしかしたら合間に更新あるかもしれませんが (2023年2月3日 21時) (レス) id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
けもの(プロフ) - ちょんちょんいさん» ありがとうございます〜、もうじき更新できそうなのでゆっくりお待ちください〜 (2023年1月8日 11時) (レス) id: b6d7c5641a (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年12月31日 3時