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(治side)
明日のために仕込みをしてたら店のドアが空く音が聞こえた。
しまった、のれんしまうの忘れとった。
慌てて厨房から出て「すんません!のれんしまい忘れてた。申し訳ないんやけどもう終わりで…」と客に伝える。
罪悪感に駆られながらも帰らせるつもりだったが、その客を見て驚愕した。
ドアを開けたまま脱力しているその女性客は今にも倒れそうなくらいフラッフラで、
失礼やけど例えで言うならあれや、ゾンビ。
ゾンビが店ん中入ってきたんか思うくらいやった。
さすがにあの状態で帰すほど俺も冷たくはない。
取り急ぎそんな彼女のために2つのおにぎりを作った。
そのおにぎりを大切に幸せそうな顔をして食べる彼女を見て、そして人生で1番のおにぎりと言って貰えて、作って良かったと心の底から思えた。
普段、俺があのブラックジャッカルの宮侑の片割れで、ツムとの出会い目当てで来る女性も多いことからあまり深く関わったりはしないようにしてきたが、この女(ひと)にはまたこの店に来て欲しいという感情がわいて
「俺は宮治って言うん。ちゃんと覚えておいてな」
ここでの記憶が彼女にしっかり残るように、俺の名前を伝えた。
ポカーンとしてる彼女は1度考える素振りを見せて『ああ!』と何か閃いたようだ。
『だから おにぎり宮 なんですね!ようやく理解しました』
「え」
『すみません。ここの事、来るまで全然知らなくて…宮さんの店だからおにぎり宮、ふむふむなるほど』
と自己完結して満足した顔をしている彼女。
それを見て俺は笑いが堪えられなくてプッと吹き出した。
「はは、あんた面白いなぁ。見てて飽きひんわ」
笑いすぎて涙が出てきたと同時にもう一つ言いたいことが出来た。
笑わないでくださいよー!と怒る彼女を制止するように俺は言った。
「あんたの名前も、教えてや」
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作者名:るた | 作成日時:2021年10月12日 0時