51 ページ3
.
.
.
あれからどんな事を話したのか、ふらりとした足取りでオフィスへと戻る
正直しっかりとした記憶は残っていなくて
「……」
気付けばスマホを取り出して、
私の指は通話ボタンを押しかけていた
そのまま通話ボタンをポン、と押して暫くすると、只今電話に出ることが出来ません、と告げられて
静かにジャケットのポケットにスマホをしまう
休憩終了時間ギリギリで戻って来た私に、響子ちゃんは何も言わずに心配そうな顔でこちらを見た
響「…大丈夫？」
デスクへと到着するとそう聞かれ、全てを話そうかと思ったけれど
「大丈夫、ありがとう」
そう言って仕事に戻った
今話したら、身体の底にある黒い部分を全てさらけ出してしまいそうだったから
.
そして、無我夢中で仕事をして、迎えた終業時間
続々と家路を急ぐ同僚や上司を横目に、人混みの中で帰る気になれなくて、黙々と作業を続けていると、コトン、と置かれた箱
パッと顔をあげると、響子ちゃんが帰り支度を済ませて立っていて
響「頑張りすぎないでよ？
…甘いもの食べて元気出しなさい」
何があったか、詳しいことを聞かないのは彼女の優しさで。ぽん、と背中に優しく手を置かれると、響子ちゃんは歩いて行った
ありがとう、響子ちゃん
「…来てない」
スマホをポケットの中から取り出して確認すると、折り返しの着信は無い
口に出したら溢れてしまいそうだとか、そんな事を思ってたくせに私は、なぜかこの人には何でも話したくなる
営業先へと出ている陸さんも、同僚も上司も居なくなったオフィスで、デスクに顔を伏せた
.
「…陸さん？」
遠くに見えるのは、陸さんで、その横にいるのは
「待って、陸さん！」
走っても、追いつけない
声を出しても、私の声は聞こえていない
梓「…私を裏切ってたの？信じてたのに」
ぐるりと振り返ったのは梓さんで、悲しそうな顔で私を見ながら、陸さんの手を引いて遠ざかる
「待って…行かないで！」
.
「お願い…」
樹「A！！」
肩を揺すられた感覚で、パチリと目を覚ます
しゃがみ込んで肩に手を置きながら、息を切らせた藤原樹が、困った顔で私の顔を覗き込んでいた
樹「…一人で泣いてんじゃねーよばか」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りい(プロフ) - とても良かったです！！！ (2021年10月11日 2時) (
レス) @page50 id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - 美憂さん» 読了、コメントありがとうございます！素敵だと言っていただけるいっちゃんが書けて良かったです(^^) (2021年3月15日 1時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
美憂(プロフ) - 最高な作品でしたー。いっちゃん素敵！ (2021年3月13日 22時) (レス) id: 35846edb09 (このIDを非表示/違反報告)
まいぽん(プロフ) - 蘭さん» ありがとうございます！ぜひ読ませていただきます！！ (2020年3月10日 23時) (レス) id: 0b1b1da15f (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - まいぽんさん» 返事が遅くなってしまってすみません涙 今度また藤原樹君のお話を書かせて頂いた時には、まいぽんさんをもっと虜に出来る様に頑張りますね(^^) (2020年3月10日 18時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蘭
| 作成日時：2019年1月7日 20時
