Tomcat 2【藤原樹】

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樹「その足じゃ大変だろうと思って」


「…待っててくれたの？」


樹「まあ…
帰ったかと思ってロビーまで行っちゃったけど」









ひょい、とバックを持ってくれて、照れ臭そうにそう言ってくるものだから、嬉しくてつい頰が緩む





エレベーターに乗る時、彼はいつもドアが閉まらぬように押さえて待っていてくれる





足を怪我していても、そうでなくても、自然とそういう事が身に付いているのが彼なんだ









樹「全治２週間、だっけ？」


「うん…海青さんから聞いたの？」


樹「そ。痛い？」


「地面につけたら痛いけど、よく分かんない」


樹「…治るまで迎え行くから」


「え、大した事ないから大丈夫だよ！」









降下していくエレベーターの中、思わぬ提案に驚く









樹「俺がしたいだけ」









ね？と同意を求めるように促されると、うん…と乗り気でないような返答をしてしまう









「…何でそんな風に優しくしてくれるの？」









エレベーターを出て、ゆっくりと歩く帰り道





本題に切り出そうとするものの
なかなか気持ちを伝えるのは難しくて





気持ちを落ち着けるために、そんな事を聞いてみる









樹「何でって、危なっかしくて目離せないからじゃん？怪我してんのに走り出すし…笑」









クスクスと笑う彼の事を、
今までこんなに眩しいと感じた事はない





そして次の瞬間には一瞬だけ切なそうな顔を見せて





その表情に、胸がぎゅうっと苦しくなった









樹「…ま、早く治せよな」









と、ふにゃりと笑う





合間に挟んだ切ない顔の意味を知りたいな





その意味は、私の勘違い、かもしれないけれど





もう、勘違いでもいいや、って。









樹「家、あそこだっけ？」









近いからとタクシーに乗る事を拒否した私に合わせて、ゆっくりと歩いてきてくれた藤原樹





私の気持ちを尊重して、いつも側に居てくれた彼





気付けば家の近くまで送ってくれていて、そういえばこっち来んの久々だわ、と笑う









樹「よし、お疲れ」


「ありがとね、わざわざ」


樹「一人で上まで行ける？」


「子供じゃないんだから笑」


樹「あとで助けに来ないよ？笑 」


「来なくていいですー笑」









そして、少しの沈黙が流れた後で









樹「じゃあまた明日な」


「…待って」









帰ろうとした藤原樹のスーツの裾を
ギュッと引っ張った


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