80 ページ32
.
.
.
社長令嬢だからって、高飛車な振る舞いをした事は一度も無く、親しみ易さを感じさせるように努力をしていた事、きっと皆知っている
社食に現れた時は、皆からの注目の的だったけど…
だけど、優しい笑顔で笑ったり、会社内の些細な所に気を配っていた梓さんを見てきた
だからこそ、梓さんに勝てる所なんて一つもないんだって、そう感じてきたんだ
「貴女がした事は、もしかしたら会社の大損害に繋がるような事でした…許される事ではありません」
なるべく、言葉を選ぶように、慎重に伝える
「だけど…私のした事も、知らぬ間だったにせよ、梓さんの心を傷つけてしまった」
一呼吸置いて言うと、梓さんはパッと顔をあげた
「許されるべき事ではありません
…本当に、ごめんなさい」
好きだと思うが故に、お互いに盲目になっていたんだと、勝手ながらそう思わせて欲しい
そんなの、自己満足の我儘だと分かっているけれど
梓さんは、ぽろぽろと涙を零していく
梓「…ごめんなさい、Aちゃん」
苦しい気持ちが伝染して、涙が込み上げた
唇を結んで首を横に振り、精一杯応える
梓「Aちゃんが悪い女の子だったら
もっと楽だったのになぁ…」
困ったように笑った梓さんは、いつもの皆から憧れにされるような女性に戻ったような気がした
梓「貴女の事が心配で、
隠れてる2人があそこにいるよ」
「えっ…あ!!」
海「げっ、見つかったじゃん!!」
樹「海青がデカイから…」
エレベーター近くの大きな柱の横から、ニョキッと姿を現したのは、海青さんと藤原樹で
気まずそうに、2人して此方へ来て横に並んだ
梓「Aちゃんの良さ、私にも分かった気がする」
「私の良さ?」
樹「…いいのそれは」
藤原樹がそう言い捨てると、梓さんは小さく笑った
梓「大切な身体、傷付けてしまって…
本当にごめんなさい」
と、そう言い残して
頭を深く下げた梓さんは去って行った
「…お2人の部署は自由ですね」
海「そんな事ないよ?部長を筆頭として、可愛いAちゃんが心配なだけ!ねー樹!」
チラ、と藤原樹を見上げると
樹「ん、良く頑張りました」
と、優しく笑って頭に手を乗せられるから
我慢していた涙がまたジワリと視界を滲ませた
.
2136人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りい(プロフ) - とても良かったです!!! (2021年10月11日 2時) (レス) @page50 id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - 美憂さん» 読了、コメントありがとうございます!素敵だと言っていただけるいっちゃんが書けて良かったです(^^) (2021年3月15日 1時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
美憂(プロフ) - 最高な作品でしたー。いっちゃん素敵! (2021年3月13日 22時) (レス) id: 35846edb09 (このIDを非表示/違反報告)
まいぽん(プロフ) - 蘭さん» ありがとうございます!ぜひ読ませていただきます!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 0b1b1da15f (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - まいぽんさん» 返事が遅くなってしまってすみません涙 今度また藤原樹君のお話を書かせて頂いた時には、まいぽんさんをもっと虜に出来る様に頑張りますね(^^) (2020年3月10日 18時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蘭 | 作成日時:2019年1月7日 20時