episode 31:人に成る ページ34
陽が落ちきった中、闇に紛れて何かが喰らいあっている。
琥珀と藤の光が交差する隣で、私達もまたぶつかり合っていた。が、蛇達とは違って私が防戦一方だった。
蛇を差し向けようにも向こうの蛇に食い止められる。このままでは埒が明かない。
冷静になれ。策を考えろ。
先に宝具を使えば勝機はある。聖杯を取り込んだ霊核といえど宝具をくらえば弱るはず。その隙に霊核を破壊すれば私の勝ちだ。
……いや、本当にそれでいいのか?
そもそもオルタは私の願望の具現だ。単に無力化して1つになっても機会を狙ってまた同じような事を起こす可能性が高い。
……あぁ、ならこうすればいい。多少マスターに迷惑をかけることになるけれど、これなら丸く収まる。
丁度その時マスターたちと合流することが出来た。
「オロチ!待ってて、今回復を___」
「大丈夫ですが一旦前線から離脱します。良い物陰を見つけたので、皆さん私についてきてください」
「逃がさない!」
オルタがこちらに襲い掛かる前にタイミングよく私の蛇が彼女に絡みついた。
「くそっ……!」
「今のうちに!」
撒いてひとまず落ち着くことが出来た。
「ごめん。俺が油断していなければ……」
「大丈夫です。ところでマスター、1つ頼みがあるのですが」
少し間を置いて私は言った。
「オルタには私1人で挑み、宝具で確実に仕留めます。そこで、私がオルタと共に果てることを許して欲しいのです」
マスターの目が見開かれる。分かっていた。けれど特異点を取り除き、これから先も同じことを起こさないようにするにはこうするしかない。
「彼女自身をなんとかするには私も座に還り、1から話し合うしかありません。分かってくださいマスター」
「だからってオロチまで死ななくても!」
「話し合うことが大事なんです。ただ力で抑えるだけでは根本的な解決にはならない」
ナイフを取り出しそれを自分の長い髪に当てて、一思いに切った。
「断髪と同時に私の意思で貴方との契約も切りました。これが私の決意です」
マスターは黙っている。が、その目は確かに私を見送る目だった。
「……ありがとうございます。せめてこれを貴方に。私の代わりです」
私は宝物をマスターに託した。生前から大切にしていた、お祖母様から貰った結紐だ。
「では今世の最後に、サーヴァントとしてでなく1人の人間として、自分とケジメをつけてきます」
1人1人の顔を目に焼き付け、あとは振り向かずに、自分が待つ場所へ駆け出した。
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時