episode 23:歪曲理想都市 渋谷 ページ25
どこからともなく声が聞こえる。周囲を警戒するが気配画感じられない。
「気配遮断スキル、相手はアサシンか」
アサシン…暗殺者…さっきの声の調子…まさか!
「先輩は壁の方へ。周辺を固めます」
ゆっくり移動する。壁に背中が着いた瞬間辺りの影が揺らぎ、数体の蛇が襲ってきた。
とっさに騎士王と槍兵が蛇の首を斬るが、奴らは斬った部分から再生し数を増やした。
「皆さん目を、目を攻撃してください!」
「目なんてどこにあんだ!?」
「紫に光っている所が恐らく目です。見たところ私の蛇と同じ。なら目を潰せば暫く襲えないはずです」
自分の蛇で相手の頭を噛み砕く。予想通り蛇は砂のように崩れて消えた。
「もういいでしょう?姿を見せなさい!」
空に向かって言うと全く反対の私達いる方から笑い声が聞こえた。
闇から現れたのは着物に似た黒い装束の、私と同じ顔をした人物だった。
「こんばんは、いい夜だね。そう思わない?“左目”」
彼女は私を見つけると薄ら笑いを浮かべて言った。
「ようこそカルデア。ここは生まれ変わった渋谷。普通を望んだ私達の街だ。マスターには感謝してるよ。左目を連れてきてくれたんだからね」
でも…、彼女は笑みを消し言った。
「左目が来たならもう貴方達に用はない。確立するまであともう少し、それを邪魔するのは許さない」
また蛇達が襲いかかる。それも全部的確に仕留めた。
「明かりのある場所へ!影がなければ蛇は現れません!それと弓兵、私になにか武器を!」
「了解した」
投げられた2丁のハンドガンを取り構えると彼女は困惑したように行った。
「なんでそっちにいるの?そいつらは私達の街を壊そうとしてるんだよ?なら守らなきゃ。漸く手に入る日常を!」
「…私はそんなものを望んだことなど一度もない」
彼女は間違っていない。確かに私は普通を望んだ。けれど私はそれを否定した。
彼女は今にも泣きそうな声でまた言った。
「また見ないふりするんだ…どうして?どうして私を見てくれないの?ねぇどうして…
銃を持つ手が震える。何も答えられない。答えようと口が動かない。引き金を引くことも出来ない。
そのままでいる私を彼女は攻撃もせずただ見つめていた。と思うと諦めたように背を向けた。
「少し観光の時間をあげる。その間にきっと君は考えを改めてくれるさ」
軽やかに跳んでいく黒いシルエット。振り向きこちらを向いたその目には歪んだ私たちが写っていた。
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時