episode 13:仲間 ページ15
起こされて私は槍兵と共に食堂にやってきた。心なしか賑わいがいつもより鮮明に聞こえる。
キッチンでせっせと動いていた赤い弓兵が私に気づくと少しは回復したか、と声をかけてきた。はい、と私も二つ返事をした。
席につくと周りが和食を食べている中私のところにだけあのカレーが置かれた。
「君にはこれが一番口に合ったようだからな。これを食べている時が一番いい表情をしていた」
見られていたとことに徐々に恥ずかしくなった。それを隠すようにカレーを口に放り込む。
初めての時と同じ味、匂い。1つ違うのは舌を突き刺すような熱さではなく、内側から温めてくれる熱。その優しさに私の顔も緩んでいった。
「…美味しい」
小さな一言に弓兵は少し得意な顔をした。横で槍兵が彼をつつく。彼は少しきまり悪そうに口を開いた。
「先日は、不快にさせてしまったようで、すまなかったな」
思いもよらない言葉に私はしばらく目を丸くしていた。私が何も言わないので、彼の顔がまた歪む。やっと私は返事をした。
「いっいえ、あれは八つ当たりと言いますか…とにかく私が至らなかったからですので…その、よければ今後も、仲良くしていただけませんか…?」
終わりと共に小さくなっていく私の声。最後を彼が聞き取れたかは分からない。が、その心配はいらなかったようで、彼は苦笑しながら返してくれた。
「構わないが、私を相手にするのは大変だぞ」
「ご心配なく。人付き合いの多さには自信があるので」
後片付けを手伝っているとマスターが駆け足でやってきた。
「オロチ!具合はもう平気?」
「はい。お陰様でこの通り。ご迷惑をおかけしました」
頭を下げるとマスターは微笑んだ。何故か問うと彼はごめんごめん、と言って話し始めた。
「いや、オロチ変わったなって思ったんだ。なんというか…可愛くなった」
「かっ…!?」
そんなこと言われたの初めてで頬を赤らめると彼はそれそれ、とまた続けた。
「そういう所が変わったなって。今までなにか溜め込んでるような顔してたから。馴染めたようでよかった」
手招きで私を呼ぶと彼は手を私に差し出した。
「改めて、ようこそカルデアへ!これからもよろしく、オロチ」
その手に手を重ねると一瞬で捕まえられて握手の形になった。少年とは思えない程しっかりした手に、サーヴァント達が彼について行く理由を見つけた。
「ええ、こちらこそ宜しくお願いします。マスター」
やっと仲間になれた私は彼の手をしっかり握り返した。
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作者名:巳月 要 | 作成日時:2017年12月25日 22時