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桐「A、」
『んっ、んー』
桐「もうそろそろ病院行くけど、起きれる?」
『ん、起きる』
寝たからか顔色は良くなっていた。窓の外を見ると雲ひとつない晴天。
桐「よいしょっと、」
『ありがとう』
桐「ふらふらしてない?気持ち悪ない?」
『今はだいじょぶ、』
手を握ってAを起こすと寝起きの温かさが伝わってくる。
桐「じゃあ、行こっか」
これから事実を突きつけられる。俺は1時間後何を思って、どう向き合っているんだろうか。
『こんにちは、』
桐「こんにちは。お願いします」
先生の机にはカルテなどの資料が何枚かあってそこから引き抜かれた1枚が俺らの前に出された。
【先程の検査の結果が分かりました】
唾を飲んだ。静寂を遮る心臓の音が煩い。
【Aさんは“鉄欠乏性貧血”という病気です。一般的に言われる貧血ですね】
なんか、少しだけほっとしてしまった自分がいる。聞いたことない重い病気だったら、とか考えていたから。
【しかし、Aさんは症状が重いです。最近変わったこととかありましたか?】
『えっと…』
でもやっぱり、何かがおかしい。
桐「あの、」
【はい】
桐「最近映画を撮ってて、ご飯とかまともに食べれてない気が…」
『そんなこと…』
桐「だって今日も残してたし、昨日だって昼しか食べてないんやろ?」
『そうやけど、』
【もしかしたら、拒食症の可能性も有り得ます。それか、先程の診察からいくとパニック障害も有り得ます。精神科に行ってみてください】
拒食症?パニック障害…?淡々と話は進んでいくけど、俺は追いついていなくて。何が何だか分からなかった。
Aを見ると涙目で手が震えていた。Aの手をギュッと握った。ああ、俺には何ができるんやろうか。
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作者名:いと | 作成日時:2023年9月7日 13時