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桐「A、もうそろそろ行くで」
『ん、分かったー』
二人でボードゲームで遊んでいる間も刻々と時間が迫っていた。
桐「鞄持った?」
『うん。あ、スマホ忘れた!』
桐「ゆっくりでええからな〜」
いつも通りのお転婆なところも今日は何か裏があるように思えてしまう。
桐「はい、行きますよ〜」
『お願いします〜』
車を発進させると今から病院に行くとは思えないテンションと音楽に俺は不安を抱いていた。その気持ちを抑えながら病院に着いた。熱を測ったり、用紙に記入したりして順番を待っていた。
桐「A、」
『…ん?』
Aの手は震えていた。俺はそっと隠すように手を重ねた。
桐「Aの不安ははんぶんこ、やで?」
『ん、ありがとう』
そうこうしているうちに看護師さんに呼ばれて診察室へ入った。
色々問診されて、Aは真剣にそれに答えていった。俺が知ってることも知らないこともあった。俺はどれくらいAのことを知れているんやろうか。Aが入った当初から年の離れた妹みたいに可愛がってきて、昔のことも知っているはずなのに、仕事が忙しくなるにつれ、分かり合えていない部分が増えてったんやろう。
色んなことを考えている間に聴診されたりや喉見られたりして。採血されるから俺も引っ張られて採血室についてきた。
『あきとっ、』
桐「うん、手ぇ握っとるな?」
これ、昨日も見た。なんで何回もAは嫌な思いせなあかんのやろ。できるのなら、俺が変わってあげたい。
桐「一瞬やから、頑張ろ?」
『ここにおってな、』
桐「うん、おるから」
ぎゅっと目を瞑って嫌いな採血に耐えてんのが痛々しくて早く抱きしめてやりたかった。
桐「よく頑張ったなぁ」
『痛かったっ、』
検査結果はまだ時間がかかるらしい。午後以降に来てくださいやって。
桐「A頑張ったから、どっか行く?」
『えっ、いいの?』
桐「ええで〜」
久しぶりに二人の時間。何したいか聞いたら俺の料理が食べたいって言うたもんやからまた俺の家に戻った。
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作者名:いと | 作成日時:2023年9月7日 13時