□ future ページ32
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幸福への執着が、ただの願望に成り果てたのはいつのことだっただろう。
兄さんが死んだ時だろうか。
両親が敵になったと知った時だろうか。
それとも、死んでもいいと少しでも思った時だろうか。
収入がいいと思ったから、ヒーローを選んだ。
プロになるまで耐えがたいこともあったけど、両親の借金を返せばいつか幸せになれると思っていたから努力を続けられた。
それなのに、いつの日か。
ヒーローになったが故に、何も求められなくなった。
一般人だったら、ここまで失うことはなかったと思う。
だけどそうならばきっと、出会うことはなかったと思う。
『……帰ってきたら結婚しようとか、立派な死亡フラグ』
「先にしとけば問題ないだろ」
『安直な考え』
「別に良いだろ」
死ぬつもりだった。
大嫌いな両親を捕まえて、死ぬほど憎んだ弾原を自分ごと殺そうと思った。
私は永遠に弾原Aだから。
ヒーローのバレットだとしても、弾原であることから逃れることはできないと、思い知らされていたから。
うんざりしていたのだ。
要りもしない呪いだけが残ることに。
『後悔するよ。この作戦だって、うまくいく確証はない』
「その時は、一緒に責任を負うよ」
『仮にうまくいったって、私に残るのは多少の名声と多額の借金だけだ』
「それでもいい。Aがいてくれるなら、それで」
この先の未来を考えたことはない。
だってそう、考える必要がなかったから。
私はここで終わりだと、踏ん切りをつけていたから。
だけど、途絶えるはずの道の先で、相澤が待っている。
この手を握れと、差し伸べている。
馬鹿馬鹿しくて、涙が出た。
人前では泣かないと決めていたのに。
馬鹿なのは私だ。
彼を苦しめるかもしれないのに、その手を握りたいと思ってしまう。
生きたいと、願ってしまう。
「泣くなよ」
『だって……』
孤独が、怖かった。
一人が、寂しかった。
助けてなんて言えなかったし、側にいてなんて無責任なことも言えなかった。
ただ大丈夫って、強がることしかできなかった。
本当はずっと、相澤に会いたかった。
プロになった時だって、兄さんが死んだ時だって、両親の姿を知った時だって。
会いたくて、それでも言い出せなくて。
苦しくて、見えないところで泣いていた。
『私だって……好きだったよ…………』
相澤消太が好きだった。
合理性を求めるくせに、他人に甘くて。
優しくて仕方ない彼が、ずっと好きだったんだ。
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ぽん、(プロフ) - Ableさん» ありがとうございます！一気に更新してしまったのですが、思い入れがある話だったので嬉しいです！ (2020年8月18日 18時) (
レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
Able(プロフ) - 完結おめでとうございます！一気読みしてしまいました。綺麗事だけではない話でとても切実で、読んでいて感動しました。二人の幸せを願うばかりです。面白い小説をありがとうございました！ (2020年8月18日 11時) (レス) id: cf9458e2c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2020年6月13日 0時
