■ terrible ページ21
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夜が明けるまで、俺たちは何も話さなかった。
多分、話す必要がなかったのだと思う。
側にいるだけで、安心感があった。
Aもきっと、同じだっただろう。
「A先生！ この問題教えて！」
『数学？ だったらエクトプラズム……は、忙しそうだな……』
「良いでしょ？ A先生に教えてもらいたいの！」
『あぁ、まぁ……良いけど』
今日も今日とて、Aの周りには生徒が集まる。
もちろん悪いことではないが、こういう場合、休む時間がないのは負担ではないかと不安にはなる。
1年ヒーロー科の場合、彼女は副担任であるから、生徒にとっては近しい人間なのだと思う。
それに、普段俺と行動することが多いから、A組にとっては尚のこと。
いい意味で教師らしくないAの態度が、好かれる理由になっているのかもしれない。
「ね、先生はヒーロー名ってどうやって決めたの？」
「あ、それ私も聞きたい！」
『いや、数学の話を聞けよ』
それにしても、と思う。
昨日あれ程のことがあったのにも関わらず、辛みを見せずに生徒に対応する姿にさすがと感心する。
仕事に私情を挟まず、割り切れるところは尊敬すべきなのかもしれない。
ヒーローを育成する教師であるから、尚更。
とはいえ不安になる部分もあった。
Aは多分、感情を押し殺してここにいる。
いつかどうにもならなくなってしまうのでは、と思わなくもない。
『マイクが付けたんだって。前言わなかった？』
「そういえばそうだったかも」
「相澤先生ともクラスメイトだったんですよね？」
「え！ そうなんですか、先生？」
『こらこらこら、忙しいんだから相澤まで巻き込むなって』
Aに止められて、それでも笑っている生徒に、昔の自分たちの姿を重ねてみる。
それでもあまりに違いすぎていて、苦笑を零しそうになった。
彼女はあの頃だって、一度も笑っていなかった。
学生の青春とは縁がなくて、ずっとどこか遠くを見ていたような気がする。
ずっと、思い詰めていたような気がする。
『ほら、用がないなら教室に戻りなさい』
「えー」
『えーじゃない』
きっとこの先、また何かが起こる。
Aの両親を確保できない限り、また彼女は苦しめられる。
そんなことを、後ろ姿を見て思う。
確信なんて、なしに。
それから数日後、予感が最悪の形で現実になる。
事態はもう、隠すことも、ごまかすこともできないところまで来てきた。
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ぽん、(プロフ) - Ableさん» ありがとうございます！一気に更新してしまったのですが、思い入れがある話だったので嬉しいです！ (2020年8月18日 18時) (
レス) id: 97d132fcbf (このIDを非表示/違反報告)
Able(プロフ) - 完結おめでとうございます！一気読みしてしまいました。綺麗事だけではない話でとても切実で、読んでいて感動しました。二人の幸せを願うばかりです。面白い小説をありがとうございました！ (2020年8月18日 11時) (レス) id: cf9458e2c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん、 | 作成日時：2020年6月13日 0時
